仙台市議会委員 加藤和彦のHP。活動及びプロフィールなどのご紹介。

 

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定例会一般質問

 自由民主党の加藤 和彦です。
 新型コロナウイルス感染症の関連を始めとした、本市が現在直面している課題に加え、「ウィズコロナ」の世界を仙台はどのようにして生き抜くべきか、そして「アフターコロナ」の世界で仙台・東北はどのようにして戦うべきなのか、経営戦略の転換という視点から順次質疑してまいります。
 
1.地域経済回復のためのワクチンの早期接種と接種証明書
市内における新型コロナウイルスのいわゆる第5波と呼ばれる感染拡大の波は、8月25日の新規陽性者数197人をピークに、昨日は13人まで減少し、落ち着いた感がありますが、これまでの数度にわたる営業の自粛や時短の要請等で、飲食や宿泊、観光などの関連業界は疲弊の極みにあります。先週13日のまん延防止等重点措置移行で一部酒類の提供が可能となりましたが、東北随一とも言われていたコロナ前の賑わいには程遠い状況です。
もし第6波に見舞われたらどうなるのか。国分町を始め市内中心部はもとより、まちの活力が失われ、地域経済への影響は計り知れません。今後の感染の波を可能な限り小さなものに押さえ込むことが必要です。その鍵はワクチンの早期接種にあります。国は、11月には希望者へのワクチン接種を完了させる目標としていますが、本市に接種希望者がどの程度いるか分かりません。私は、8割が一つの目安だと考えますが、9月21日時点で2回の接種を終えた高齢者は約85%である一方、全体では約54%にとどまっています。今後は若い世代の接種促進の取り組みの強化が求められます。この点についての今後の取り組みと、11月の希望者全員の接種完了に向け、市の直営の集団接種や個別接種だけではなく、大規模接種や職域接種も含め、どのようにしてこの目安を達成させるお考えなのか伺います。
ワクチンの接種は、少なくとも当面は、感染対策と経済活動の両立を可能とするツールであります。EUなどでは、今年の7月から、ワクチン接種完了等を証明するデジタルCOVID(コヴィッド)証明書の運用を開始しました。これはEUなどの域内での移動時の検査等を免除するもので、人の移動を促進し、経済活動や観光などの活性化につながると期待されています。フランスでは更に飲食店や病院などの利用にも広げられています。ワクチン接種先進国は、人々の命や健康を守り、スポーツ、文化経済などの活動を早期に回復し、コロナ禍前の状態に戻す方向にかじを切り始めています。
日本では、7月26日から海外渡航者向けの接種証明書発行のための申請受付が始まりました。各市町村が発行しており、本市の発行は、9月17日までに1246件であります。
政府はこの接種証明書活用の拡大について、今月9日、ワクチン接種などを条件に、緊急事態宣言措置等の対象地域でも移動自粛の対象外とするなどの方針を決定するとともに、発行をオンライン化する方針も打ち出しました。10月に広域での実証実験を行い、11月に本格的な制限緩和を見込んでいます。私は、接種の有無について差別的な取り扱いが発生しないよう細心の配慮が不可欠だと思うのと同時に、今回国が示した方針は、落ち込む地域経済の回復はもちろん、我々人間の様々な活動がコロナ前の健全な状態に少しでも戻ることにつながるのではないかと考えます。
今後国が決めてから、証明書発行のための体制や手法などを検討したのでは遅きに失します。今後の政府の動きに迅速に対応していくことが、ひいては本格的な経済活動の早期再開につながります。本市としても、可能な準備を進めるべきと考えますが、現在の検討状況と課題等のご認識を伺います。
 
2.分野横断的な新しい東北連携
私は、昨年の第3回定例会において、コロナ禍で飲食、宿泊業を中心に大きな打撃を受ける中、東北の農産物を活用した商品開発や販路拡大等による新たな産業振興を図り、その国内外への発信により域外からの投資促進にもつなげるとともに、これまでの観光中心の東北連携から、より広い分野での連携を模索する新しい東北連携に向けたビジョンの必要性について投げかけました。市長からは、観光分野に限らずに地域経済を牽引する企業の輩出など、東北を舞台にイノベーションを生み出す施策や、農林水産業の活性化など、仙台、東北の産業の成長を支える施策にも取り組むなど、より広範な分野での東北連携を全庁的に推進していくことで、地域経済を活性化させ、東北の魅力を国内外に広める役割も担ってまいりたい、とのご答弁をいただきました。まず、その後の検討、取り組みの進捗について伺います。
 
アフターコロナにおいて、本市、そして東北の地域経済回復の当面の鍵となるのは、東北の最大の魅力の一つである「食」であり、優れた農産物や、日本でも有数の銘柄が豊富な地酒などは、世界でも勝負できるコンテンツです。
しかしながら、例えば農産物については、域外への出荷や商品開発は産地や県ごとのJA単位の実施が基本で、相互に競合関係にあるため、産地や県レベルでの連携はできても、東北という広域での連携は難しいのが現状であります。
それを可能にするのが、「観光」を軸とした連携であります。商品や食文化、農業体験を観光コンテンツの一つとして捉え、観光と組み合わせてプロモーションを行うなどの連携は可能であり、東北の強みを活かした戦略的な取り組みができると考えます。
4月から、コロナ禍の中で何とか実施している東北デスティネーションキャンペーンの各種事業の中にも農業や食をテーマとした連携事業があったと思いますが、それらを実施する中で見えてきた課題や可能性はどのようなものだったのか、また、それを踏まえ今後、どのように取り組んでいこうと考えているのか伺います。
 
3.交流人口回復を見据えた準備状況と本市の戦略
コロナが収束すると、世の中は大きく変化します。かねてより申し上げてきたことでありますが、私たちは、アフターコロナを見据え、世界も視野に入れながらしっかり準備をしておく必要があります。この秋から冬にかけて人の移動が一部解禁されれば、一気に人が動き出します。
コロナの影響で現在も苦境の中にある観光分野の計画である「仙台市交流人口ビジネス活性化戦略」の計画期間は今年度までであり、新たな戦略作りが進んでいるものと思います。
今月13日には、市長も登壇し、「都市間競争を勝ち抜く 仙台の観光のあり方 を考えるシンポジウム」が開催され、まさに、コロナで落ち込んだ交流人口の回復や、アフターコロナを見据えた観光のあり方について意見交換が行われました。ここではどのような意見が出され、何か得るものはあったのかまず伺います。
そうした議論や準備を十分生かし、国内のみならずインバウンドやMICEも含め、世界も視野に入れたダイナミックな取り組みが求められます。策定中の「交流人口ビジネス活性化戦略」について、9月7日からは市民意見の募集を開始しているようであります。これまで議会には報告がありませんでしたが、約半年という十分な時間があったわけですので、様々な議論が行われ、ある程度完成度が高まっているものと思います。ウィズコロナ時代における観光のあり方や、それを踏まえた対応方針など、交流人口ビジネス活性化戦略の現段階での基本的な方向性について、市長にお伺いします。
 
4.交流人口拡大と新たなビジネスモデル構築に向けた海外ターゲットの重点化
私は、観光を含む地域経済の発展に向けた戦略を立てるにあたっては、そのターゲットが極めて重要な要素と考えております。それは日本国内でしょうか。日本における、購買意欲の旺盛な生産年齢人口のピークは70%前後であった1960年代から1980年代終わりくらいで、以降は急激に減少しています。国の経済成長は人口成長と生産性向上の合計であります。日本は今後も人口が減り続けるものと予測されており、その減少スピードも速く、生産性向上のみによる経済成長には限界があります。
では、今後日本、そして本市は、どこに投資していくべきか、あるいは、投資してもらうか。私は、世界的視野でターゲットを重点化すべきと考えます。そのような考えの下、ご提案をしながら、伺ってまいります。
 
(1)インバウンドのターゲット:中国
 一点目が、インバウンドに絞ったターゲットについてであります。
海外戦略を立てる場合、各国の歴史や政治情勢、文化のほか、何よりも現在の経済的な発展レベルや人口構成に着目して、その段階に応じターゲットを見極めていくことが重要と考えています。
2019年度の本市における、インバウンドの上位3か国とそれぞれの宿泊者数は、第1位が台湾で12万人、第2位が中国で3万4千人、第3位がタイで1万9千人と続きます。私が強化すべきターゲットとして求めたいのは、1位の台湾と大きな開きがある第2位の中国であります。
 国の発展レベルとGDPとの関係で見た場合、最初の節目は、一人当たりのGDP1,000ドルと言われており、これを超えると都市のライフライン整備が本格化するとともに、スーパーマーケット等の開業、車やバイクの普及、地方から都市への若者の流入が始まります。
次のポイントは3,000ドルラインで、日本では1972年頃がこの時期に当たります。この年は外食元年でもあり、日本の銀座にマクドナルド1号店ができたのが1971年でした。すかいらーくの1号店も1970年と、同じ時期です。このラインを超えますと、外食産業や大型ショッピングモールが出始め、新車の販売も増加します。
次のラインは1万ドルで、日本では1980年頃です。東急ハンズ渋谷店ができたのが1978年、渋谷の109の完成は1979年、続いて東京ディズニーランドが1983年にオープンしました。この時期は消費文化が熱く、嗜好(しこう)が多様化して、少し変わったものや、かっこいいものが欲しいという意欲が大きくなり、新しい文化が生まれるラインとも言われています。
また、当時の日本では海外旅行者が1986年に500万人を、1990年には1,000万人を突破し、わずか4年間で一気に2倍に増えました。スキー場やゴルフ場などのリゾートでのレジャーが本格化するのもこの1万ドルラインと言われています。
今まさに国民一人当たりのGDPが1万ドルラインを超えたばかりなのが中国であります。コロナ禍によりインバウンド自体、低迷してはおりますが、消費意欲が旺盛なのは皆さんもご承知のとおりであります。
中国の中でも都市部では、既に2万ドル以上となっており、今後中国全土レベルで海外旅行ブームがさらに広がるのは確実です。今後、コロナ前のレベルにとどまらず、想定を超える数の中国人が日本を訪れるものと私は見ています。人口は14億人、今までの5倍から10倍の観光客が来てもおかしくありません。
アフターコロナに備え、海外からのインバウンド促進に向け取り組みを強化すべきと考えます。その視点の一つとして重要なのが、東北連携であります。仙台を始め、宮城、東北は、農産物とこれを活用した食文化、歴史資源や自然といった観光資源が豊富です。これらを観光パッケージとして売り込む取り組みを更に推進すべきです。この視点を含むこれまでの本市の取り組みと海外からの観光客数の推移、そして今後の対応について伺います。
 また、インバウンドを促進するためには、スマートフォンによる決済環境の充実が求められます。本市では、こうした環境を整備するために、どのような取り組みを行ってきたのか伺います。
インバウンドは、獲得に向けて都市間競争が激化していくことが明白です。仙台がリーダシップをとり、東北全体のスマートフォンによる決済環境の充実を含め、インバウンド受入環境をさらに向上させていくことが必要となりますが、お考えを伺います。
 
(2)中長期的な東北連携のターゲット:アフリカ
次に、仙台、東北の持続的な発展を目指し、インバウンドに限らず、特色ある地場産業の構築と育成に向けたターゲットについてであります。
16世紀の大航海時代から始まり18世紀にかけてのいわゆる植民地時代においては、近代工業は欧米にしかできないと言われておりましたが、日本が欧米以外で初めて近代工業化に成功しました。その後しばらくして、NIESと呼ばれる台湾や韓国などが、工業化によって急速な経済発展を遂げ、さらに中国、東南アジア、インドが近代工業化を成し遂げています。グローバル化が急速に進み、あらゆる国における経済発展が可能となる時代に突入しています。世界の多くの人たちが豊かさを求める根源的なモチベーションを持っています。もちろん国によって成長パターンは様々で、時間軸にも差はありますが、間違いなく多くの国が今後発展していくことが確実です。
先にも述べましたように、日本の経済成長の伸びが今後期待できない中、もっと海外、特に発展の途上にある国に目を向けて、ビジネスを推し進めていくべきと考えますが、この点について、市長のご認識を伺います。
 
そのような国々の中でも私が特に注目しているのはアフリカであります。
アフリカは、社会課題が山積みではありますが、経済的には高度成長期の入り口に入っています。50年前の日本、25年前の中国、10年前のインドと同じレベルで、加速度的に発展を遂げている地域です。アフリカ全体のGDPは約260兆円で、日本が約550兆円ですからその半分に迫ろうという勢いです。
日本で年間1,000億円以上の売上がある企業は940社ですが、アフリカでは既に400社以上あります。13億人の人口を抱える大陸であり、経済的に大きなスケールになる可能性を秘めている市場です。
生産年齢人口の点で見ますと、その増加が顕著で、2015年の6.5億人が、2050年には15.3億人に、2100年には28億人に増加していくと予測されています。これに今後の生産性向上の要素が加わりますと、アフリカの今後の経済成長は計り知れません。
国民一人当たりのGDPを見ますと、10,000ドルラインを超える国が出てきてはおりますが、上位の多くは3,000ドルラインを超えている段階です。具体的には、ケニアの首都ナイロビが2014年にこのラインを超えました。ケンタッキーやドミノピザ、バーガーキングなどの外食産業が既に進出しています。ほかにもナイジェリア最大都市のラゴス、国単位ではエジプトやモロッコも該当します。
日本は一足先に3,000ドル、1万ドル、2万ドルを、この50年で体験し、どのタイミングで何が起こるかをよく分かっているはずです。ファッション、流行が生まれるのはどのタイミングか、1万ドルラインではどんなものが必要とされるのか、そうした経験やノウハウをもっと活かすべきです。中国でも、東南アジアでも、インドでも、先んじて起きており、同様にアフリカでも必ず起きるはずです。
 
以上の課題認識を踏まえ、アフリカには4つの進出する視点、切り口があると私は考えます。その1つは、資源や第一次産品などの獲得の場、輸入先としての進出ですが、これは既に我が国全体として取り組んでいるところです。
 
2つ目が、将来の有望な市場としての進出であります。さきほど述べた、購買意欲の高い生産年齢人口の増加とともに、今後、所得も増えていきます。実際に、エジプトのカイロでは、世帯年収380万円以上の世帯の割合が約46%、ケニアの首都ナイロビでは約10%と、想像以上に増加しており、このことは、日本の商品を普通に購入することが可能な中間層が増えてきていることを意味します。
この状況を見逃すことなく、アフリカにおけるニーズを的確にとらえ、30年以上前から進出し、成功している日本メーカーがあります。カネカという女性用ウィッグの素材で有名な化学メーカーで、アフリカの女性の間では、毛髪の特性から、手軽にヘアスタイルを変えられる付け毛が人気で、カネカはアフリカで50%を超えるシェアを有しています。
また、アフリカでのインスタントラーメンの売上は、日本のものが2位です。袋ラーメンがメインで、ナイジェリアでは年間20億食売れています。仙台、東北の大きな魅力の一つである、多彩かつ豊富な農産物、さらに、農産物を加工し付加価値を持たせる6次産品、あるいは、食文化そのものなど、多角的なコンテンツとして広めるターゲットとしての大きな可能性が、ここにあるのではないでしょうか。欧米、中国や東南アジアも重要な進出先ではありますが、国内、世界のライバルも多く、競争も激しい。これまで本市、あるいは、東北で、このような観点からアフリカに進出した事例はあるのか、あればその概要についてお示しください。また、この点に関する当局のご認識と、今後の可能性について伺います。
 
3点目が、生産拠点としての進出です。
我が国の生産拠点の海外進出先としては、中国、そして東南アジアに勢いがありますが、中長期的な視点で見れば、アフリカへの進出が有望であります。
本市企業の進出先として、状況の把握と可能性の調査を他にさきがけて行うべきと考えますが、ご所見を伺います。
 
最後の4つ目は、新たなビジネスモデルの発掘、構築と、その実証の場としての進出であります。
日本における国民一人当たりのGDPが1万ドルを超えたのが1980年頃で、中国がまさにこの段階にあることはさきほど申し述べた通りですが、
その後日本は、1991年に3万ドル、1995年に4万ドルを超えて以降は、完全に足踏み状態となり、俗に「失われた20年」とまで言われています。
なぜそのような状況となっているかについては様々言われていますが、私は、3万ドル、4万ドルに到達した先のビジネスモデルを、先手先手を打って構築できなかったことにあると考えます。日本の得意分野であった家電、半導体、ケータイなどのものづくりで韓国や中国に負け、いわゆるGAFAのように新しい業態への進出も出遅れました。いかに新たな経済モデルを作れるか、今、日本はそれが問われています。
日本では、既得権益者がいると、それを奪われまい、守ろうとする大きな力が働きます。そのため新しい取り組みにブレーキがかかり、良いアイデアが生まれても実現、発展しにくい。既得権益者がいないところでまず成功させることも一手と考えます。実際に、さきほどご紹介した企業を始め、進出に成功した日本企業も出てきています。
特にAIやドローン、自動運転のようなサービスは、実証サービスの中で進化させる必要があります。リアルなデータの数と、それによる進化・改善が非常に重要であり、その実験場としてアフリカが最適であります。
デジタル化の観点では、アフリカは既に日本よりも進んでいる現象もあります。送金、決済について、日本では、マイナンバー普及政策の後押しもあり、やっと利用が広まり始めたとはいえ、まだまだ現金が幅を利かせている状況ですが、アフリカでは、成人の全員と言っても過言ではないほどの人がスマホやケータイを持ち、財布代わりとして生活必需品になっています。これは大きなイノベーションにつながる基礎となりえます。
規制や既得権益でがんじがらめの日本や他の先進国ではなく、アフリカを起点として起業している面白いベンチャーが出てきています。金融、遠隔医療、ドローン、MaaSなど規制が厳しい分野、AIなど多くの実証データが必要な領域はたくさんあります。
アフリカにおける社会経済の現状を把握のうえ新たなビジネスモデルを発掘し、地元や東北の企業の技術を活用したシーズを育成することが、今後の本市、あるいは東北の地域経済の息の長い発展に資すると考えます。これが今行政に求められる重要な役割ではないでしょうか。この点に関するご所見を伺い、
私の一般質問を終わります。