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定例会一般質問
自由民主党の加藤和彦です。 宮城地区を中心に住民に不安が広がっておりますクマなど有害鳥獣の問題と、アフターコロナへと向かって仙台経済がどう発展していくのか、海外への販路拡大と農水産業の振興、人材の育成を起点としたベンチャー創出などの好循環の創出、という観点で、順次質疑してまいります。
【有害鳥獣対策】 まずは、クマをはじめとする有害鳥獣への対応についてであります。 最近、立て続けに、散歩等をしていた市民がクマに襲われるという事故が発生しました。7月27日の早朝に、青葉区熊ケ根において女性がクマ1頭に遭遇し、軽傷を負った事故を皮切りに、8月14日の朝には青葉区上愛子において散歩中の方が、さらに8月29日の夕方にも、2件目の事故から数百メートルの場所で電気柵補修中の方と一緒にいたお孫さんがクマに遭遇し、けがを負うという事故が発生しています。けがをされた方にお見舞い申し上げるとともに、早期の回復をお祈りするところでありますが、わずか1か月ちょっとの間に3件もこうした事故が起き、さらに先週6日にはJR陸前落合駅近くで街路樹に登っているクマが捕獲されました。ここまで頻繁に起きるとなると、緊急事態と言っても過言ではないものと思います。 市内に生息するのはツキノワグマですが、本来ツキノワグマは大変臆病な動物と言われています。私も昔から様々な事案を見聞きしておりますが、従来は山にとどまっていたものが、山と人家の間にある農道などに下りてきたり、川を下ってきたりということが、近年特に頻繁に起きるようになっているように感じます。一歩間違えば人命に関わるような事態になっており、直ちに向き合わなければなりません。 一連の事故を受け、市では8月30日に野生生物調査の専門事業者とともに現場調査を行ったとの報道がありましたが、現場調査に基づき、どのような対応を行ったのか、また、近隣町内会、小学校にはどのような注意喚起を行っていくのかお伺いします。 事故があった現場の周辺には、クマが身を隠すための藪が多く危険との指摘もありました。宮城地区などでは、休耕農地に草が生え、藪のようになっている箇所が散在しています。土地を所有している方に注意を呼びかけ、草刈りをしていただくなどの協力をいただきながら、できるところからやっていくという姿勢も大事ではないでしょうか。所見を伺います。 これから秋が深まれば、クマが冬眠に向けて活発に活動する時期になります。加えて、クマに限らず本市の西部地域においては、イノシシなど有害鳥獣への対応も年々増加しています。現在は、各総合支所及び区役所の担当課で、他の業務の傍ら対応しておりますが、市民の安全確保に向けて、より機動的な対策を講じる必要があると考えます。JR陸前落合駅近くのクマ捕獲の際は、総合支所担当課が持つ緊急捕獲の範囲を超えており、環境局が宮城県や宮城県警との調整を行ったようですが、捕獲の命令までに時間を要したと聞いており、あまりにも遅い対応ではないでしょうか。一刻も早い地域住民の安心・安全を考えると、区のエリアをまたいで、現場で関係機関と調整し判断できる専門部署を西部地域に設置することも一つの手法ではないか、と考えるところですが、お考えを伺います。
【アフターコロナを見据えた経済成長】 次に、アフターコロナを見据えた経済成長の仕組みづくりについて伺います。 新型コロナウィルス感染症の終息は未だに見通せない状況にありますが、アフターコロナを見据えた経済成長に向けて、早急に、そして戦略的に手を打っていく必要があります。 しかしながら現状はどうでしょうか。私は、我が国全体としても、また仙台市としても、いささか仕組みが遅れているのではないかと感じております。
●地元企業の海外展開 私は「今後の地域経済の成長を考えるうえでは、もっと海外に目を向けるべきである」との考えのもと、昨年第3回定例会において、アフリカを例としてお示しをしながら、発展途上にある国などへのビジネス展開の必要性について取り上げました。 本市において間もなく人口減少時代に突入します。国内の需要は先細りしていくことは明らかなわけですから、仙台の産業の中心であり、大多数を占める中小企業が、世界をマーケットとして販路を広げていくことが必要不可欠であります。 特にアジアやアフリカといったマーケットは、今後も人口増加が見込まれるだけでなく、日本では当たり前になっているようなものでも、まだ普及しているとは言えず、日本国内の商品や製品の開拓の余地もあるなど、大変有望な市場であります。また、8月に開催されたアフリカ開発会議(TICAD)においても、日本政府から今後3年間で官民総額約4兆1千億円規模のアフリカへの資金投入を行っていくことが表明されています。 貿易関係の資料を調べてみますと、2021年の世界各国の商品貿易の輸出総額のランキングで、我が国は約7,500億ドルで世界第5位となっております。第1位は中国、第2位はアメリカとなっており、国の規模などを考えると私も納得をするところですが、第3位はドイツで輸出額は約1兆6,300億ドル、第4位はオランダで約8,300億ドルとなっております。ドイツの人口は約8,000万人であるにも関わらず、輸出額は我が国の倍以上、またオランダの人口は日本の7分の1ですが、輸出額は我が国を上回る状況となっています。ドイツは工業製品、オランダは農産品が、それぞれ輸出を牽引しております。 特に、産業構造が比較的近いといわれるドイツと我が国を、中小企業という点に着目して比べてみますと、民間企業の割合が企業数としては全体の99.5%を超えているのは共通ですが、海外へと輸出している中小企業は、日本が約3割程度にとどまっているのに対し、ドイツは約6割となっており、さらに言えば研究費に投じる資金も約100億ドル以上と多額になっており、この差は決して小さくないと思います。 日本の中小企業は、海外からの所得移転が少なく、内需、主に個人消費で賄っているわけですが、人口減少で内需の大幅な拡大は見込めない中、私はこの固定化した産業構造、内需頼みからの脱却が必要と考えるものです。 我が国全体としても、また本市としても、企業の海外展開の取組みを強化する余地がまだまだあると思いますが、昨年私が本件を議会で取り上げて以降、地元企業の海外展開に関して、どのような取組みをしてきたのかお伺いします。
●東北連携による海外展開と東北全体の農業・水産業への貢献 海外展開を進めることは必要ではありますが、地域の中小企業が個別に海外に売込みを行って、大きな成果を上げることは現実的にはなかなか難しいものがあります。個々の企業や自治体ではアピール力や認知度が低いのであれば、「東北のものをパッケージで売り込んでいく」といった視点が重要です。 本市の経済戦略では、取組みの視点の一つとして「東北の持続的発展への貢献」を掲げております。本市経済は東北全体に支えられ成長したこと、本市経済の持続的成長に向けては、東北地方全体の持続的発展を意識した取組みが必要である、そのような記載があります。 まさしくそのとおりであり、企業の海外展開にあたっても、本市が東北全体に貢献していく、東北連携の視点が求められます。その際、以前から繰り返し指摘しているように、私は、東北の一番の良さは農業や水産業にあると考えております。仙台が東北のハブとなり、農業や水産業における新たな取組み、研究の発祥の地になっていくような取組みを期待しているところです。 本市には世界トップレベルの研究拠点である東北大学があります。令和6年度には次世代放射光施設ナノテラスも稼働します。こうした資源をフルに活用して、東北の基幹産業である農業や水産業の成長に向けた取組みを強化すべきと考えますが、当局の考えをお伺いします。
●本市の成長産業の育成 本市では、以前よりインバウンドや観光に力を入れてきました。本市の交流人口ビジネス活性化戦略では、取組みの視点の一つとして「東北一体での魅力発信」を掲げるとともに、インバウンド等においても仙台・東北ならではの魅力を東南アジア等へ情報発信することとしております。海外から仙台・東北への旅行者の誘客という人の流れだけでなく、より幅広い分野で貢献していく役割が本市には求められます。交流人口の増加を目指すことは、いわゆる外貨の獲得にもつながるものであり、地域経済の活性化に向けて充実を図っていく必要があることは理解いたします。 一方で、仙台は京都のように観光メインで経済を成り立たせていける都市ではないということもまた、現実ではないでしょうか。 一国の経済状況を示すGDPとは、要するに「付加価値の総計」であります。付加価値をつくる能力がなければ、経済成長率も上がらないし、国民所得も増えません。日本のような成熟した先進国において、キャッチアップ型、コストと価格競争力勝負の大量生産工業への先行投資で付加価値が生まれる余地は極めて少ないと言わざるを得ず、付加価値創出はデジタル化とグローバル化の中で生み出される破壊的なイノベーションに牽引される時代になっていると考えます。 時代が変われば付加価値のありようも変わります。大きな付加価値を生む産業は、歴史をたどれば、農業から工業、工業から情報産業、情報産業から知的産業へと移り変わってきました。変化が加速している現代においては、「では、次は何だろう?」と常に先を見据え考える力が問われています。 今後の本市経済の持続的発展に向けては、世界をマーケットにした新たな成長産業を育てるための戦略が必要です。産業の育成に補助金を出して終わりというのは昭和のやり方であります。何を本市の成長産業と位置づけ、それをどのように育成していくのか、市は明らかにすべきです。当局の所見を伺います。
●人材の育成とベンチャー・スタートアップ支援 現代は「VUCA(ブーカ)の時代」と言われております。これは、変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢を示すものであります。ビジネスの現場においても、これまでの常識や手法が通用しなくなっております。こうした時代において、最も必要なことは何なのか。私は「人材を育てること」そして「イノベーションの構築」であると考えます。 国際競争力をつけるためには、国内の人材を育てることはもちろん、国外からも優秀な人材が集まる国・地域になる必要があります。今のイノベーションの時代、競争力・成長力の圧倒的な源泉は多様な卓越した人材の集積であり、そうした人材の「知」から生まれてくるスタートアップであり、そこに世界中のカネから吸い寄せられていくことになります。 そうした意味で、卓越した若者が育ち、集まる土壌の整備が急務であると考えます。当局はこうした人材の育成、そして集積について、どのようにお考えでしょうか。所見を伺います。
どんな生態系なら日本が中心となり得るか、言い換えれば、どういう条件のところに人材が集まるのか考えてみますと、自由と資本主義の両方があり、研究空間、生活空間、ビジネス空間、家族や教育を含めた人生空間として、世界基準で魅力的な場所であることが求められると思います。 日本、特に東北は、治安が良く、四季折々の気候で、美しい自然と名所旧跡、美味しい食事、世界的には今や住居費、生活費も安い。魅力度的には抜群のエリアであり、このポテンシャルを活かさない手はありません。 もう一つの条件は、バイオのように他地域で生態系の中心が形成されている領域で、どう稼ぐか。例えば、ネット空間ではGAFAMが席巻していますが、ゲームやアニメコンテンツのレイヤーでは日本企業が強みを発揮しています。他領域においても、どんどん多層化し、リアルレイヤーも融合していく中で、レイヤーをうまく選択すれば、大企業に比べて資本力に劣るベンチャーであっても、高成長、高収益のビジネスモデルを確立できる可能性があります。 岸田内閣においては、今年を「スタートアップ創出元年」と位置づけております。 スタートアップは、経済成長の原動力であるイノベーションを生み出すとともに、環境問題や子育て問題などの社会課題の解決にも貢献し得る、新しい資本主義の担い手であり、6月に公表された「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる骨太の方針もおいても、「スタートアップ」を「人への投資」「科学技術・イノベーション」「グリーン」「デジタル化」と並ぶ重点投資分野に位置づけ、今後5年でスタートアップを10倍に増やす目標を掲げ、スタートアップへの支援を強化していく方針を打ち出したところです。 世界的に見ても、スタートアップが様々な分野のイノベーションを牽引している状況であり、我が国の今後の成長に向けては、スタートアップの育成が重要であるということは言うまでもありません。また、違う側面となりますが、諸外国では就職にあたりスタートアップの人気が高いことから、スタートアップの育成を進めることは、優秀な人材を繋ぎ止めることにも資するものであると私は考えます。 本市は、令和2年7月に国のスタートアップ・エコシステムの推進拠点都市として選定され、地域の産学官金で構成する「仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会」が策定した「仙台スタートアップ戦略」に基づき、様々な施策を展開しております。 グローバル化とデジタル革命によって地域と地域、国と国という物理的距離の障壁がほぼなくなっている現代において、地方からダイレクトアクセスで世界とビジネスしている企業は少なくありません。 例えば、この会社がなくては物理学の研究が成立しないといわれるほどの存在である素材メーカー、静岡県の「浜松ホトニクス」、アメリカのボーイング社との直接取引で制御装置機器を製造する、長野県飯田市の「多摩川精機」、高度なセンサー技術と電磁弁制御を組み合わせた自動水栓を製造する長野県佐久市の「バイタル」などなど、枚挙にいとまがありません。厳しい競争環境の中ですが、仙台・東北はモノづくり力、プラス「生産・販売モデル」のセットで国内外に積極的に展開すべきであります。 仙台発で、評価額10億ドルを超える、いわゆるユニコーンと呼ばれるスタートアップが多く誕生していく、そんな未来を願うものですが、これまでのスタートアップ支援の取組みの成果をお示しください。併せて、国の動向も踏まえて、更なる取組みの強化が必要と考えますが、当局の所見を伺います。
●まとめ これまでいろいろ述べてまいりましたが、本市経済が持続的に発展し、それを牽引する成長産業やスタートアップの創出を進めるためには、人材育成と投資喚起によってイノベーションが起こるような「社会的土壌」を整えることが何より重要であります。 知(人材)のイノベーション力の向上が投資を呼び込み、その投資がビジネスの付加価値・生産性の更なる向上を生み出し、政策による労働分配率の向上を通じて、全体的な所得増加へつながっていく、そのような好循環を生み出す仕組みを構築していくことが今求められているのではないでしょうか。最後に市長の所見を伺って、 私からの質問を終わります。
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