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有害鳥獣対策について
となる有害鳥獣について 仙台市宮城西部地区の振興を図る上で難問がある。それは有害鳥獣の跋扈である。猿と熊は昔から住民とのふれ合いが多く、作物が荒らされ食いちぎられてまるで猿のための食物を提供するかのような農作で、住民は追い払うのに多大の苦労を重ねてきた。そして、耕作放棄が現実のものになった。熊は、奥山が不作の年によく現われて冬眠に備えた餌漁りや子育て中の親子連れが人に襲いかかるなど危険な時期がある。市内の山手では猿や熊の出没が市民の生活の脅威となっている。 しかし最近は、イノシシによる農作物・田畑の被害が目立っており、最大の有害動物となっている。猪の住む北限は名取川以西と最近までいわれてきたが、現在では加味地方まで北上し、農作物等の被害は急速に増大している。そしてその対策を考える暇もなく頭を痛めているうちに、その尋常でない田畑の荒らし方に落胆して耕作放棄へと急速に住民の意識が傾いている。そのイノシシが青葉山のすぐ傍まで来て行動していることが目撃された。このままでは仙台の市街地をイノシシの群が食物を漁りに歩き回るのも夢でなくなる日が来ることは確実である。 具体例を列挙すれば田植え後の田に侵入して泥水を浴び、背中を田の面にこすりつけ鼻で泥をかき回し、それが広い田いっぱいに暴れ回るため、手の施しようがない。 植え付けた芋種を掘り起こして食い尽くし、鼻であちこち掻き回すので芋の作付けを断念するしかない。防護用に張った金属ネットに鼻で穴を開け自由に出入りする。2程度の高さの防護柵を難なく飛び越えて侵入する。金網を地下30cm位埋め込んでも更にその下まで鼻で掘ってくぐり抜ける。有刺鉄線を張っても強靭な体毛と頑丈な皮膚で体幹を掩っていて全く防除効果がない。そして餌を一度ありついたイノシシは重ねてやってくる習性がある。しかも群を同道しての再来となる。 このことについて当局は相当データーを集積しておられると聞きますので、肝心な点についてお聞かせいただきたい。
イノシシの習性から防除の基本を考えることについて ア)柔軟な活動性 猪は本来昼行性だが、警戒心が強く人間を避けて行動するため、結果として田畑へは人がいない夜間に侵入する。 イ)能力・行動 体長1.2、体重100を超えるようになり、犬の4~5倍の優れた嗅覚を持ち、餌を求めて移動する。助走なしで1以上の高さを飛び越え、20の隙間をくぐり抜ける能力もある。鼻で60kg以上の石を持ち上げることができる。性格は臆病でおとなしい動物だが、オスには口外上に向かって伸びた非常に強く鋭い牙がある。メスは満2歳ぐらいで初産を迎え1回当たり4~5子出産する。集団で見掛るのは数頭のメスが共同で子育てをするためである。 ウ)高い学習能力と記憶力 一度被害にあった水田や畑は何度も同じ個体から被害を受ける。また一度ワナにかかったり、捕獲を目撃すると以後警戒して捕獲が難しくなる。 この習性や特徴などはどのように市民に広報しているのか当局のご報告をいただきたい。 イノシシ防除の手軽で効果的な方法について イノシシの警戒心が強い習性を利用して、次のような方法が使われる。 耕作放棄地などの雑草繁茂地は絶好の隠れ家になる。集落に侵入しにくくするため集落への侵入路を中心に刈り払いを行い緩衛地を作って見通しをよくする。侵入路は一定していて獣道を作る習性がある。その道の入口 を少しだけ刈り払うと用心深い習性からその道を通ることがなくなる。結果としてほかの道へ行くことになる。 これはどの地域にも活用できる身近な対策であると考えますが、当局のご見解を伺います。
強力な防除策について ア)電気柵 設置が容易で高い効果が得られる。ただし、漏電しないよう 除草を欠かさずするなど維持管理に注意する必要がある。 イ)ワイヤーメッシュ 一度設置すると維持管理が容易で強度もある。1程度では軽く飛び越えるので、上部30cmの部分を外側に20~30度折り曲げると接近しても乗り越えない。イノシシの目線から上を見ると折り曲げた部分が高く見えるから。 ウ)ネットや漁網 ある程度の効果があるが、食い破られる場合がある。二重にし、外側を垂らすと効果がある。 これについて、本年4月被害防止計画を策定したが、この事業 はどれほど活用されているか、また活用を促進する広報をどのよ うに行っているか当局の事業状況をお伺いします。
(5)被害防止策について ア)イノシシの捕獲駆除体制づくりでは、白石市などすでに対策 実施隊を編成している自治体があるが、仙台市ではその組織を編成しないことにしていて、宮城県猟友会の仙台市内4支部に依頼する方法で解決する方針だが、果たしてそれが最善の選択であるかは疑問である。猟友会の方法はすでに高齢者が多く会員が減少し、経験は豊かだが体力が衰えていて対応が難しいことも予想される。イノシシ対策には地域ぐるみの徹底した防除が求められるので、対策実施隊のような組織で情報を交換しながら有効な駆除法を実施するようにできないかと考える。 これについて、当局のこれまでの実施状態をお知らせいただくと共に今後の計画についてお伺いします。
イ)防除実施にはどうしても国・県・市の予算補助がないと地域ではお手上げになる。実際中山間地では、早春の筍、初夏のイモ類、8月以降の水稲の被害程度が深刻化していて、その割には対策が遅れている状態である。平成20年度のモデル地区の防除柵の設置がなかなか進まず、JA仙台各支店、さらに地域ぐるみや町内会の活動には補助事業として強力な広報と支援が強く要望される。 ウ)中山間地の農業生産の危機が現実のものになっている。それは若者の農業離れにより60歳以上の高齢者が殆どで、農業生産条件が不利で明るい将来像が見えない現状である。 その上にイノシシによる被害が重大なままでは耕作放棄地がますます増える。そしてイノシシ被害は全県的な問題として捉えなければ解決しないところまで来ている。そこで宮城県が強力な音頭をとって各市町村に防除の情報を提供し、財政措置を図るよう速やかに県に申し入れ協力して対策を実施してほしい。 これらについて、当局のお考えと実施に取り組む計画をお伺いします。 (6)共同防除活動について 食害に悩む大倉地区では、青葉区大倉の農家等19人でつくる白木地区鳥獣害対策組合が立ち上がり、金属柵5450枚を設置した。それだけ被害が重大であったということである。延べ9.8kmの金属柵を設置するため、高齢の農家では人手を求めてボランティアを募集した。参加者には秋の芋煮会で、捕らえたイノシシも振る舞うとのことである。参加者と地元農家の交流にもつなげる良い企画である。
(7)イノシシの地域資源としての活用について イノシシの成獣はワナを仕掛けてもなかなか捕まらず困った存在だが、イノシシの子、いわゆる“ウリ坊”は比較的捕獲しやすいことからこれを飼育してボタン肉にし、シシ鍋やハムに加工して販売するという地域輿しがある。 幸い宮城地区においても地域住民とNPOなどが連携し、イノシシ活用の地域興しに動いている。 共同防除活動や地域資源としての活用のような取り組みを、モデルケースとして行政が支援していくことは農村の衰退からの脱却の道を開く極めて重要なことと考えるが、当局のご見解をお伺いします。 最近の被害状況と防護柵についてでございます。 被害状況につきましては、平成18年度に被害件数40件、被害額51万円、19年度には、126件、234万円、20年度には、210件、487万円と被害件数、被害額とも大幅に増加しております。 このため、本市では、国の補助制度などの活用を図りながら、被害防止のため、金属ネットや電気柵による防護柵の設置を推進してきたところでございます。 設置した地域においては、おおむね効果を上げておりますが、常日頃の管理状態などから、ご指摘のような被害を生じている地域もありますので、状況に応じて個別、具体的な対応等の指導を行っているところでございます。
イノシシ対策(イノシシの習性等の広報) 習性や特徴に関する市民への広報についてでございますが、農業者等の皆様が自主防除に取り組むうえで、イノシシの生態や習性を把握していただくことは大切だと認識しております。 私どもの農政だよりやホームページによる広報はもとより、地域ごとに開催している被害防止説明会や専門家による捕獲講習会などを通じて、情報の提供に努めているところでございます。
イノシシ対策(効果的な防除法) 手軽で効果的な防除法についてでございますが、ご指摘のように、捕獲以外の手段として、耕作地への進路の遮断や耕作放棄地の草刈りなどが被害防止に効果的と言われており、地域説明会などにおいて、防止対策の一つとして紹介しているところでございます。 しかしながら、人の気配がないと、いくら生息地をきれいにしても、侵入してくるともいわれており、今後、地域の方々から実情をお伺いしながら、より効果的な防除法について検討を進めてまいりたいと考えております。
イノシシ対策(被害防止計画の活用等) 鳥獣被害防止計画に基づく事業の活用についてでございますが、今年度の防護柵の計画は、10ヶ所総延長15としておりますが、8月末現在で、11ヶ所17と計画を上回っております。 また、わな猟免許取得の促進を目的に、講習会の受講費に助成制度を設けたところですが、受講者数は8名と、被害の増加を反映して積極的に活用する地域が増えております。 これらの計画につきましては、地域ごとに開催しております説明会や、各種広報紙、ホームページなどにより情報提供を行っているところでございます。
イノシシ対策(捕獲駆除の体制づくり) 本市における捕獲の実施体制についてでございますが、これまで、JA等農業団体や猟友会、県、市などで構成する農作物有害鳥獣対策協議会を設置し、情報交換や駆除方法などを協議しながら対策を講じてきております。 駆除は、相当の経験を有する狩猟免許取得者に限られることから、協議会から猟友会に依頼し、猟友会が駆除隊を編成し対応しているところでございます。 今年度からは、被害農家自らがイノシシの捕獲が行えるよう、わな猟免許の取得を奨励することとし、講習会の受講経費に対する助成制度を創設したところであり、今後とも、農家に強く働きかけ、捕獲体制の充実を図ってまいりたいと存じます。 さらに、今般の緊急雇用創出事業を活用し、イノシシの被害状況の確認や捕獲設備の巡回強化などのため、新たにパトロール隊を設置し、監視体制を強化しているところでございます。
イノシシ対策(地域ぐるみ等の活動への支援強化) 地域ぐるみの活動に対する支援強化についてでございますが、イノシシの行動範囲が広いため、集落や町内会を単位とした地域ぐるみによる対策の推進を図ってきておりますが、地域住民の合意形成が必要であることから、組織の立ち上げに時間を要する場合もございます。 市としましては、今後とも、国と市の補助制度の併用など支援内容の強化や具体的な対策について地域説明会を精力的に行い、地域の要望も踏まえながら合意形成に粘り強く取り組んでまいりたいと存じます。
イノシシ対策(県への支援要請) 県に対する支援の要請についてでございますが、これまでも、宮城県市長会などを通じ、イノシシ対策への財政的な支援について要望をいたしてきたところでございますが、被害状況が深刻さを増してきておりますので、他の自治体とも連携を図りながら、引き続き対策の充実について、さらに要望してまいりたいと考えております。
イノシシ対策(共同防除活動と地域資源としての活用) 共同防除活動に対する支援についてでございますが、イノシシによる被害地域の多くは、世帯数の減少や高齢化などにより、防護柵の設置作業などが大きな負担になってきております。大倉地区のボランティアを活用した取組みは大変効果的でありましたことから、今後、こうした事例を参考にしながら、支援のための仕組みづくりを検討してまいりたいと考えております。 また、イノシシの地域資源としての活用につきましては、イノシシ被害の深刻な関東以西の地域における活用事例も参考に、地域の方々と課題を整理しながら、必要な支援のあり方について検討してまいりたいと存じます。 |