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平成24年 第1回定例会
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加藤和彦 定例会代表質問自由民主党・仙台の加藤和彦です。一般質問いたします。前回の代表質問に引き続き、「温故知新」を胸に戦災後の成長戦略として工業化を計画した当時の、仙台市の意気込みを振り返りながら、今回の大震災後の市の復旧・復興、更に振興を目指して市民の活気を呼び起こす道について質問させて頂きます。 1 市の将来ビジョンの創造について 市は仙台の都市像として、仙台が培ってきた都市の個性を、市民と行政の協働によって発展させた姿として、「誰もが心豊かに暮らし続けることができる都市『ひとが輝く杜の都・仙台』」を目指すとしております。大変のどかな故郷を思い出させる都市像です。これが今の大震災後の都市像としてふさわしいでしょうか。まるで夢の国のように思えます。 宮城県は「富県宮城」の実現を期して、震災からの復興の近道として産業(製造業)を何よりも優先させ、雇用創出を急ぐ村井知事の信念が色濃く滲み出ています。そして将来ビジョン33の取り組みを発表しております。 仙台市が自画自賛している「仙台の未来を創る市民力」は達成目標でも努力目標でもなく、行動の原動力の一つだと思います。だから市民に分かりにくいのです。確かに耳障りのよい文学的な言葉です。しかしこれですべての物を失って生活に困っている被災者の切に待ち望む緊急な復興対策に臨み、また急速に変動する世界の動きに対応していけるでしょうか。力不足だと思うのは私一人だけでしょうか。 市が達成すべき将来ビジョンは見えない。将来ビジョンの創出に考えが及ばなかったのか。無視したのか。東北における仙台の位置づけ、果たすべき機能、先見性のある街づくり、活力溢れる生産力の成長等で最優先分野は何か。将来の雇用創出のために最も有効な道は何か。私はさまざまな疑問に思いを馳せております。 そこで仙台の将来ビジョンを、現実から出発して商業立市を考える前に、物の製造力を立て直すことが先だと考えるのは、戦後の先人がそうだったように、成長戦略として工業化から出発するのは経済の基本でしょう。物が出て来て始めて売り買いが成立するとして、その物はどこからでも持ってきてのことと考えるのは大間違いでしょう。確かに流通が便利な現今ではそのような考えが成り立つかも知れないが、そもそも資源が乏しく輸入に頼るのが避けられない日本の宿命として、その加工や技術を磨いてどこにも負けない製造業を培ってきたことを思えば、復興の最先端に「ものを創る」ことを先行する必要があると考えます。総合評価は市民の合言葉として親しまれ勇気づけられる言葉がよいでしょう。それを受けて各分野では事業ごとの将来ビジョンを設け、その達成に全力で取り組むことが必要だと考えます。そして折角立てた多額の予算が、経済分野をはじめ復興事業では、施策の熟度に対する危惧の念を持たれたり、達成目標に対する達成度・効果の検証は十分できているのかなどの疑問が残らないようにすべきです。 平成24年度は途方もない額の依存財源を計上しておりますが、莫大な借金で健全化が遠い国家財政を考えれば、巨額の支援はいつまでも続くとは限らない。だから自主財源の多寡が復興の速度に影響すると考えなければなりません。つまり自主財源の創出に全力を挙げて取り組まなければならないのです。地元選出国会議員よると、永田町や霞ヶ関では徐々に被災地を見る眼が厳しくなってきたというのも頷けることです。増田 寛也元総務相は七十七銀行春期講演会「宮城・東北の復興と新生に向けて」で、国が東北に予算を重点配分できるのは新年度までが限度。全国的な関心も今後薄れると指摘しております。 だから私は奥山市長が「仙台が復興の先頭を切る」と決意を強調した割には実施計画案には緊迫感が感じられない。私が前回議会で代表質問した平成24年度の予算編成について重点項目には手厚く予算付けし、一般項目ではメリハリをしっかりつけて大鉈を振るう必要があると述べましたが、この予算ではこの点が曖昧なまま残っております。やはり将来ビジョンがはっきりしなければこのようになるのも致し方ないと考えます。 この内容は私の質問の大前提でありますので、奥山市長のお考えをお伺いします。2 製造業振興こそ市民活力に点火 市民の活力源を何に求めるか、それは何といっても製造業振興でしょう。当面は基本的に立ち上がる力だから、食生活の元になる農業に力を入れなければならないのは当然です。現在もそうだが生活費をどこで求めるかが市民の大問題です。避難場所で乏しさに耐えてやっと生活している市民がいる一方で、今は復興バブルで潤う方もいるでしょうが落ち着けばどうするか、やはり将来に亘って持続可能な地元に根ざした産業に携わることを求めるでしょう。 そうでないと新たな失業者を生み出し深刻な課題を抱える結果になる恐れがあります。だから安定した雇用の場の創出を図るとともに、産学官連携による人材育成に取り組み、多様な雇用機会の場を創出し、臨時的雇用から正規雇用への移行を務めることが大切です。 現今の世界は変化の速度が速く、次々に新製品が現れて世界を席巻し、従来どおりでは取り残されてしまう状態です。だから新産業の開発と真似の難しい生産術の開発が伴うことが、市民生活安定の要素となる時期に来ております。 100万人の復興プロジェクトでは復興関連産業の振興は謳っているが、果たしてそれだけでいいのだろうかと疑います。つまり仙台が立ち直った時点では他の地域ではその分進んでいる。追い掛けるだけでは駄目でその先に行かなければ仙台地域は期待されながらも全国の先頭に立つことはできない。だから真っ先に製造業の復興に取り組むことが大事であります。その事業を支える物流基盤を固めることについてまとめます。 ➊ 製造業振興を支える物流基盤の整備
ア 港湾整備は東北の心臓の回復 私の構想では、地域の復旧復興にしても仙台市だけの範囲で考えることはあり得ないと考えます。先ず東北の心臓の回復について、港湾整備は産業・物流復興の大きな力になりますが、仙台塩釜港は東北唯一の国際拠点港湾として、東北を支える国際物流拠点、完成自動車の輸送拠点、フェリーによる国内流通拠点、エネルギーの供給拠点、観光及び離島振興の交流拠点としての役割をはたしています。言うなれば東北の心臓部であります。これは仙台港の建設当時、仙台湾地区新産業建設都市計画の中核的事業でありました。そして現在も仙台港の担う使命は同じです。 地震津波による被害は甚大であったが、市当局をはじめ各方面の努力で港湾機能を回復しつつあり北米航路再開までこぎ着けたことは大変喜ばしい限りであります。岸壁機能の回復に始まって背後の工業振興に至る事業は、関係者だけでなく東北全体の希望の星であります。最近キリンビール工場が操業を開始しました。市においては更なる尽力をお願いする次第です。当面は復旧計画を推進されることですが、将来に向かって地域の振興に貢献する港湾整備と周辺に立地する製造業について更なる振興を目指すよう期待しております。仙台塩釜港と松島港を包括した役割分担や相互の機能補完により、今後の県全体の振興に寄与するわけで、それを県の仕事だといってばかりいられない重要な仕事です。 仙台塩釜港の将来ビジョンについて当局の目指すところをお示しください。 イ 道路網の整備で東北に血液が流れる
❷ 関連産業の集積と更なる振興 シリコンバレーの例を引くまでもなく、市の周辺に展開する製造業間の連携や異業種間の提携により、優れたものづくりが期待されているのが仙台地域であります。最も有利なのは産学連携が密接にできることです。市は仙台経済発展プロジェクト事業に7億7千万円を当て、販路拡大支援、東北復興交流パーク、東北復興創業スクエア、ものづくり関連産業復旧・復興支援、中心部商店街活性化等促進、首都圏企業プロモーション、仙台国際貿易港振興、産学連携推進の各事業を立ち上げる計画を作成しました。八百屋感覚で何でもありの予算ですが、商業・交流に力が入り、ものづくりに力点が見えないのは極めて残念です。 確かに販路拡大を考えるのは分かりますが、魅力ある生産物がなければ販路拡大を唱えても無理な相談で現在から将来に向かって伸びが大きく期待できる方向を見定めて誘導するぐらいのことは専任スタッフがいれば相談できるし、宮崎県のようにトップセールスを盛んにして仙台の名を冠した製品へ導くくらいのことはできると考えます。そのためにはそれに応えるだけの関連産業の実績を積み上げる必要があるので、必然的に都市整備局・建設局を含めた総合的なプランを作成するべきであると考えます。 仙台は東北大学をはじめとする世界レベルの知的資源を有する研究機関があり、企業も連携を望み、更に外資系産業の研究開発部門を誘致して、グローバルな産業エリアを創出するほか、地元企業の国際競争力向上を図るため、成長の著しいアジア等で販路開拓・拡大を促進するなど、グローバルなビジネス展開を支援するよう広い視野に立つべきであります。 これらについて、当局のお考えはどのようなものなのかお伺いします。 ❸ 医歯工連携・健康福祉分野に活路 同様な考えのもと、東北地域においてはMEMS(極小電気機械システム)、半導体製造装置関連分野、光産業分野、医歯工連携・健康福祉分野、自動車関連部材等の5技術・産業分野を鉄金属リサイクル分野、IT分野が支えつつ、広域仙台地域を含めた4地域が密接に連携をとり、国内6産業集積地域を牽引することによって、地域の核となる複数のクラスター(集団)が早期に形成され、東北全体に波及効果が及ぶとされております。しかもやがてではなくて早期にとして国際競争力を確保する狙いがあります。 私はこの中で特に医歯工連携・健康福祉分野に注目しております。医療、看護などの現場から生まれる臨床上のニーズと機能性に優れる素材開発や精密・微細な加工技術などの先端技術シーズが融合し、産学連携での医療機器等の開発を進めて、次世代医療機器・健康福祉機器を地域から世界へ普及しようというものです。 医歯工連携分野は次の4分野に分類されます。 ア 医療関連機器、歯科関連製品等の一般医療関連製品 イ 医療機器に付随する情報・サービス ウ 医療・医薬品・機能性食品 エ 医療材料全般 健康福祉分野は次の4分野を対象とします。 ア 医療に関連するリハビリテーション イ 健康維持 ウ 生活支援に関連する保険予防・福祉介護機器 エ 健康福祉分野に係る情報サービス等に関わる多種多様な技術分野 中でも特筆すべきは健康福祉分野で広域仙台地域において、日本とフィンランドの産学連携、産産連携による研究開発が始まっていることです。そして東北各地で展開する医歯工連携プロジェクトが相互に連携し、臨床試験の実施や薬事法への対応等で互いにサポートするとともに東北各地のMEMS、IT、光等この分野に関係する高度な技術を取り入れることによって、医歯工連携・健康福祉分野でクラスターを形成していくようになります。 このような情勢の中で、市に求められているのはこうした分野で有望な事業所の誘致、進んで進出できる環境整備、開業支援、必要な情報網の提供、各種の連携を円滑に行うことであります。県は自動車工業の誘致に極めて積極的に働いて実現した実績を持っているが、一方仙台市はどうか、寡聞にしてそのような話は聞いておりません。待っていて客が来るほど魅力があるというのか、来るものは拒まずで消極的なのか、誘致の仕方が下手なのか、現在有望な事業所も多少あるが、市の規模から見ると決して多くはない。つまり仙台市の発展への貢献度の高い重要な産業ととらえていないのではないでしょうか。市民生活の活性化と定着定住の基本的な要素である、仕事に誇りを持つように誘導すべきであると強く主張します。 市ではこの要求にどのように応えるお考えなのかお伺いします。❹ 伝統地場産業を大切 に 私は昔から伝統のある伝統地場産業の発展について考えております。伝統地場産業は仙台の文化を支えている産業であって、市民生活に溶け込んでいるから大切にしなければならないと考えております。食品・工芸品・実用品等で仙台を象徴する品々を作っている事業所だけでなく、一般市民に馴染みの深いものや技術が沢山あります。戦後バラックで営業を始めた多くの店は食堂で、屋台も大きな役割を果たしていました。 食料の配給がままならず、市民は山野草・海藻など飢えを凌ぐためにあらゆる知恵を絞っていたとき、サッカリン味のかぼちゃおしるこや海藻麺でも美味しく食べたとき、人知による新しい文化が生まれたのではないか、焼きハゼを使った雑煮など名物とか、郷土料理とかには必ずいわれがあるものです。それを紹介し保存し伝えていく動きの一部を市も担っていると考えます。 熟練による技能は一朝一夕に身に付くものではなく、体の感覚で動作をする貴重なものです。これらの保存と発展には市の積極的な協力が求められております。避けがたい急速な高齢化と後継者不足により、継続不能になる事業所が多くなっているためです。市は足下の強化を優先して伝統地場産業の行く末を豊かにする施策に力を入れて頂きたいとお願いします。リンカーンが自分の場所に誇りを持つ人が好きといったことはこれだと思います。 これについて当局のお考えをお伺いします。 |