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加藤和彦 定例会代表質問
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加藤和彦 定例会代表質問
敗戦後の日本にあった燃えるような情熱は、灰燼の中からとにかく豊かになりたいと願う国民一体の願望と、物はなくても精神性は世界一だという誇りに支えられて、一旗揚げようという気概を持つ若者が世界に飛び立っていったことを回想します。 この度の大震災においても、被災者が立ち上がる気概を見せているものの、少子高齢化の進行により、住民の中に若者が少なく、育てば大都市に流れていって被災地には定着しない現状から、戦後の頃とは構造的に異なった面があると考えます。 さらに、どこにいても世界中が分かるほど情報網と送受信装置が発達し、後進国という概念がなくなり同時に日本が先進国だとは考えにくくなっている現状です。その上世界の発展は極めて高速で進行し、復旧・復興に手間取っている間に遥かに追い越されていることを我々は自覚しなければなりません。このような実態を直視してそれならば本市の今後の将来は如何にあるべきかを論ずるのは私達議員の責務ではないかと考えます。 取り組むべき課題は、当局が前回の答弁で主として商業都市として発展してきたと自任している、本市の将来性を新しい視点から見極めることと、省エネによる都市の再構築によって活力を引き出すこと、さらに都市の縮小傾向を踏まえて、海外への技術移転による市の収入への道を切り開き、国益へも貢献すると考えます。
1.主として商業都市として発展してきた本市の将来性を新しい視点から見極めること 新しい視点とは、小売業・製造業という括りではなくて、需要に業態を合わせていく感覚で見直すのです。 (1)本市は歴史的に商業都市であった 伊達藩時代から領内では米を多く産出し、交通網も貞山運河の掘削で安全に航行でき、阿武隈川河口から石巻まで自由に物資を運べる便利な道を開発した。このように条件が揃ってしまえば裕福になるのは当然で、ひもじい思いをせずに過ごせたから、商売も殿様稼業で通っていた。だから明治維新で大きく変化したとき、戊辰戦争で敗北し藩は多くの借金で身動きが取れず金融が円滑を欠き、いち早く適応することができなかった。 だが、農産物や水産物など多くの物資が集まる上に、人口も東北一だし鉄道など交通機関が発達してきて、遠方との取引が増大し各種の物資の集散地としてその役割を果たしてきた。それで特に新しい工業製品を作らなくても間に合った。でも一部の起業家は満足せず、三居沢発電所建設での電力供給を元に製糸業、紡績業、ビール味噌醤油の醸造業などの農産物加工から始まって電気事業、金属加工業へと発展していった。しかし官公庁、学校などが杜の都に集まって都市機能を主導していたから、工業化は縁遠い存在であった。 当時の行政はそれを良しとして運営してきたが、今思えば果たして良かったのかどうか、為政者の先見性はどうだったかについて当局のご意見をお伺いします。 (2)欲しい物が直接消費者に届く商業の進化への対応 2月7日に報道されたユニクロの超大型店「仙台泉店」のように、郊外地に進出した大型小売店に始まって、全時間対応の販売網を巡らすコンビニストア、インターネット販売まで商業の業態が変化している現在、時間をかけて対面販売で品物を直接見たり触ったり味見したりして確かめ安心して購入する方を選ぶか、生産から小売りまでできるだけ中間マージンを減らした安価で購入する方を選ぶか、その選択を消費者に迫る形に変わってきた。それに伴って商店街の振興についても考え方が変わってきた。 本市の中心街といえば昔から一番町から仙台駅前を考えてきたが、大都会はどこでもそうだが、副都心や拠点市街地が発達して市全体として発展する方向で考えるようになってきた。そして商品は世界中の多くの国や地域から仕入れ、どこにいても買いたい物が買える時代になった。 その流れの中で本市の地元産品はどうなっているだろう。よそから仕入れて流通したからそれだけでよいものかどうか考えてみる必要がある。大震災で海寄りの農地は大きいダメージを受け、漁港は跡形もなくなり、以前のような一次産品供給は考えにくい。県内も同様だが復興の歩みは遅々としてもどかしく、重要な働き手は仕事を失い地元から離れて行き、残るのは高齢者だけという状況では生活のめども立たない。したがって他の地域から供給されるものを消費するしかない。しかし商業都市というのは周りに多くの産品があってこそ健全に成長するのは歴史的に当然です。 そこで仙台経済発展プロジェクト事業において、中心部商店街活性化等促進①中心部商店街将来ビジョン推進事業、②中心部商店街活性化促進では、市民の新思考での商店街に寄せる期待感をどのように受け止め、市としてこれから商業都市としての仙台市をどのように築き上げていくお考えか、構想をお聞かせ願います。
(3)巧みに流通させて消費者の信用を繋ぐことと新しい需要の掘り起こしの支援 「ともに前へ」の合言葉はこの項に最も相応しいと信じます。仙台港をはじめ大量の物資集散拠点を持つ本市は、情報網・交通網の充実と安全性から陸上海上を問わず常に生産地と消費地をつないでいる。その効率が向上すれば経費が少なく商品の価格に貢献する。青果市場や魚市場に冷凍庫・冷蔵庫を充実して産物の鮮度を保つため市が果たした役割は大きい。残渣処理の効率化も評判がよい。 それならば新しい商品の開発による新需要の掘り起こしもできるに違いない。産学官の協力により将来必要と見込まれる商品を発掘したり開発して、トップセールスを先頭に市を挙げて全国に売り込み、成功すれば世界に売り込むことを考えるべきであると考えます。一方今の世界の商品開発の速度や開発のねらいなどの研究が必要であるし、国内での需要の変化を探ることも必要である。 (1)販路拡大支援、(2)東北復興交流パーク、(3)東北復興創業スクエア、(4)ものづくり関連産業復旧・復興支援、で取り上げている考え方は復旧・復興重点であって、極めて視野が狭いと考えざるを得ない。どうしてそうなのか、復旧・復興といえば時代の要請に叶っているし市民の受けもよいだろうと考えているとしたら大間違いである。その間に世界は新たな方向へ進むと考えると、本当にもどかしいのである。 市当局の従来の考え方から脱皮し、未来の発展に繋ぐ発想の転換をしていかなければ、市の発展は望むべくもないと考えます。このことについて当局の将来の展望と構想をお伺いします。
2.省エネによる都市の再構築によって活力を引き出すこと 白熱電灯から蛍光灯へ、蛍光灯の内面塗布剤の有害性からLED灯への進化、そして省エネの進行への寄与は科学技術の進歩による現代化の象徴のようなものである。また、多雨国の特徴である水利の合理化と普及の面では、本市は全国でも頂点に立つほどの技術を備えていることも事実である。水道管の早期交換で漏水対策を推進し、他の都市よりも事故が少ないことは誇りでもある。そこで、さらに省エネを推進し都市を再開発することについては喫緊の課題であると考え、質問を行います。 (1)荒井東地区をモデルとして省エネ市街地を展開するその先 本市の進めている荒井東地区の省エネ市街地は様々な検討を経て計画されたと伺っている。だが197戸で小規模住宅地としての機能は充実しているが、産業とは結びついていない懸念がある。これは本市の計画の常態で、住民の生活に重点を置き、産業による活性化を考慮しないのはいつものことである。 私鉄が鉄道を開設するときは、必ずその周辺に住民を住まわせ、大企業や各官公庁を呼び込み、教育機関を誘致し、商店街を展開し、大規模な開発を行って鉄道の健全運営を図っている。 それでは地下鉄東西線を見よう。終点荒井駅の乗降客はどうみても多数とは考えられない。それは付近に事業所が多数展開しているわけでもなく、今後大規模な住宅団地の開発計画があるわけでもない。荒井駅に接続する公共交通機関も将来に委ねている状態で、多数の乗降客が利用すると考えるのはどうしても無理がある。現在の自動車社会で公共交通機関が軒並み赤字を克服できていないのは市バスでも十分証明されている。幹線道路の充実が本市の復興計画でも明らかで、この点からも相当矛盾を感じる。 東西線フル活用プラン2013推進事業を見よう。(1)東西線沿線街づくり推進では、②(仮称)荒井駅駅舎上部空間施設整備、(3)東西線PRキャンペーン、東西線関連道路整備事業では荒井駅自転車等駐車場整備、バス事業活性化支援事業では(2)乗合バス活性化促進、(4)せんだいスマート等推進、を挙げているが周辺地域への波及効果をもたらす事業は見当たらない。これでは地下鉄東西線を開通する準備としては利用促進の術が限られていることを示している。この裏にはさまざまな困難な問題を抱えていることは推測できるが、市の考え方を変えれば実現できることである。 産業活性化・雇用対策促進事業では(5)中小企業・新事業創出総合支援に6項目の支援事業を掲げているが、それを展開する場を提供するとは示されていない。だからこの事業は単に空想に終わるのではないかと疑問を感じる。 この問題は相当論議されてきたが、地下鉄東西線の計画時と現在の状態認識との相違について当局の見解をお伺いします。
(2)原子力や石油への依存を減らしてクリーンな発電の普及と利用の促進 日本全体の課題でもある省エネ事業は、各自治体の課題でもあり、地域の実情に即した方式が求められているのは周知のことである。そしてその成果が各地から報道されている。電力会社への売電が実現し発電の自由が促進し、発電と送電の分離によりさらに発電先を選択できる時代が迫っている。 この問題は省エネ・新エネプロジェクトに止まらず各地の防災計画、低炭素都市づくり推進、ゴミ減量・リサイクル促進と連動しており、私も前に質問させていただいているので強い関心を持っている。 荒井東地区の民間によるエコモデルタウンの利用、田子西地区区画整理事業地内に建設される復興公営住宅及び戸建て住宅に情報通信技術を活用したエネルギーマネージメントシステムを導入し、非常時のエネルギーの確保や平時の高いエネルギー効率と経済性の両立を目指す「エコモデルタウン」の構築をはじめ、防災・仙台モデル構築プロジェクトにおいての(2)避難所等防災体制の充実強化において、①避難所等への防災対応型太陽光発電システム整備事業の具体化は、市民待望の事業で自立電源確保と蓄電技術等の組み合わせにより、大災害に備える市当局の姿勢を具現したものと高く評価する。 本市がその実現に努力されていることはよく伺っているので、『エコモデルタウン』構築計画の概略、及び防災対応型・太陽光発電システム整備事業の設置計画の概略をぜひお伺いします。
(3)低炭素都市づくりで快適な住環境の設定 中国の巨大規模のスモッグ公害は日本にもまき散らし、昔の四日市を思わせる姿に、早く日本の高度な公害防止技術を普及させたいと思うのは私一人ではないと思います。しかし中国にはそれなりの問題があって、簡単ではないのが実状です。仙台市は粉じん公害を全国に先駆けて克服した先進性を持っている。そして現在の課題である低炭素都市づくり推進に取り組んでいる。しかもその取り組みを市民全体の課題として取り上げていることに好感を持つ次第です。 二酸化炭素の温室効果については市民の隅々まで熟知しているところだが、取り組みということになると今ひとつ実践できていないのが実状である。それをせんだいEアクションとして家庭向けや若者向けに実践を促していくことは、将来に向けてクリーン都市づくり・環境づくりを目指していることが使命であるとして行政の立場を明確に示している。 この事業について具体的にどのような取り組みを考えておられるか、当局の計画をお伺いします。
(4)ゴミへの新しい観点と活用 ゴミといい排出物といい人の活動にはついて回るものであるから、その処理に当たっては再資源化を重点に置かなければならないと考える。資源の少ない日本を再資源化により有資源国にすることは、重要な事業であると考える。消費者は神様という観念が広がり、使い捨ての時代を経験してその反省から、ゴミへの見方を変え社会問題ともなった処理できないほどのゴミ排出を解決する手法を市当局と市民の協力によって認め合い克服してきた。 毒性のあるものや放射能のある場合は、燃焼しても廃棄に問題があるが、その前にゴミの減量の方法を身に付けるとか、食用油のリサイクルや生ゴミから肥料をつくるなど有効活用の道を実践することが大切である。大震災による莫大な量の瓦礫も何とか処理して活用の道を切り開いた市の力量からすれば、クリーン仙台の推進は市民の協力を得られるだろう。ゴミ減量・リサイクル推進事業において、(1)ゴミ減量・リサイクル推進、(2)地域の快適環境づくりの各事業は市民同士の協力により実現するものと考える。最近ゴミ集積所の利用が一部の身勝手な廃棄により壊されたり期日を守らなかったりで混乱している所が目につくようになった。単に町内会の問題として片付けられない生活感覚の相違があると考える。(3)廃棄物不法投棄防止対策では大量の不法投棄は社会問題としてよく取り上げられるが、初歩的な少量のゴミ問題も見逃さないことが大切であると考える。 最近の種別収集ゴミ処理量の推移と今後の減量目標等の諸計画について当局の所見をお伺いします。
3.企業の海外進出に対する自治体の支援 冒頭に論じた都市の縮小傾向を踏まえて、海外への技術移転による市の収入の道を切り開き、国益へも貢献する発展的な志向から、立ち後れてはならない分野の一つに東北の企業の海外進出に対する自治体の支援、さらには自治体自身が事業者としての海外事業参加があります。仙台市が古くから国際化を指向してさまざまな取り組みを進めていることはよくわかります。そしてマカオに仙台牛を売り込んだ実績があることはすばらしいことだと思います。しかし最も競争の激しい、企業の海外進出に力を入れて支援しているでしょうか。
(1)加速する日本企業の海外進出 少子高齢化による国内市場の縮小を受け、海外に活路を見出そうとする国内企業が増加しております。特に急速な経済成長を遂げ、内需が拡大している中国やインドを始めとする新興国BRICS、中でも特に東南アジア各国に強い関心を持つ企業は多いことは周知の事実です。今では大企業に限らず中小企業も自社の生き残りをかけて海外進出を視野に入れているのが実態です。しかし、言葉や商習慣が異なる上、先進国と比較して十分な情報が整っていない新興国への進出は容易ではありません。それで必要性は感じながらも海外進出に踏み出せない企業は少なくないという情報が問題として流れております。だからこれまで従来行われてきたJETROや商工会議所等による支援策に加え、自治体による域内企業のサポートが力を発揮し始めております。 ユニクロの柳井正社長は「チャレンジしない人生は人生でない」と言っています。そして国内外から多様な人材を採用し、国内・国外の事業所で成績を伸ばしています。チャレンジしてこそ道が開けることを示しています。 海外進出希望の企業の実態と希望先の情報入手支援について当局はどのような見解をお持ちですかお伺いします。
(2)地方自治体の域内企業への海外進出支援体制づくり 既に一部の自治体では、域内企業への海外進出支援体制づくりが進められているのです。例えば神奈川県では、駐在員事務所を設置し、県内事業所に対して情報提供を行っているほか、展示会への参加をサポートするなど、商談に向けた支援を行っております。平成22年11月には広島県とインド南部のタミル・ナドゥ州政府が人的及び経済交流の進展・相互の産業の更なる活性化に取り組み推進のための覚書を締結するなど、域内企業の更なる進出加速のために、相手国地方政府と包括的な経済協力を結ぶ自治体が現れました。 しかしそれは国の事業との連携による域内企業の海外進出支援が中心となっているのは当然でしょう。経済産業省は平成21年度より南インドやベトナム等、アジア地域のインフラ開発や日本企業進出の中核となり得る地域を設定し、それらに地域への進出を支援するための事業を実施しております。 生産コストの高騰で国内は採算割れ、海岸進出となれば容易ではないこのジレンマをしっかり受け止めて、企業の相談に乗る窓口は本市でも必要です。また各国の国民性や法律・商習慣など日本とは異なることをよく知って現地人の幹部採用をはじめ企業が動きやすくなるような準備が求められる。本市としても重点的に進出先を選び、職員を長期間勤務させて対応の仕方を身に付けて帰国させ、企業へのアドバイスが円滑にできるようにすべきであると考えます。 将来を見通して企業を育てる計画について当局の計画があるかお伺いします。
(3)自治体自身の事業展開 これらの機会を活用するのは、企業向けの取り組みだけでなくて、自治体自身が事業者として海外事業に参入する際の足掛かりともなるものです。近年、上下水道・廃棄物処理等のインフラ需要が新興国において拡大しており、これらについて市場を獲得するため自治体が国内で培ってきた事業運営ノウハウを輸出するケースが見られるようになった。人口減によって事業規模の縮小が見込まれる自治体にとって、新興国でのインフラビジネスは収益拡大につながるチャンスであり、これらの国において現地政府や現地企業とネットワークを構築することは、自治体自身の事業展開にとっても有益であると考えます。 仙台市の治山治水に始まり上下水道や廃棄物再生処理等に関するノウハウ、さらに水道使用料金の徴収まで、すべて極めて高い水準にあるといわれておりますが、海外に移転すれば移転先の振興発展に役立つだけでなく、本市の収入にも大きく貢献し、国益に寄与するところ莫大と考えます。海外のシステムは民営が多いが、すべてを一括して売り込むので、使う方も複雑でないため評判がよく、単に上下水道技術を売り込むよりも受けていることに着目する必要がある。 海外への技術移転について問い合わせなどはあったか、またシステムや技術を紹介しようという計画はあるかお伺いします。
(4)自治体の海外拠点づくり この展開を受けて更に自治体共同の海外拠点の運営を図る必要があります。自治体国際化協会では、自治体の海外における事業展開に対応するために、自治体共同の海外拠点としての機能の充実を図っている。例えば地元産品の販路拡大、観光PR海外の地域振興施策の先進事例調査などに関する自治体の海外活動をきめ細かく支援し、年間で約300件の実績があります。 支援の実績は、事前の相談及び情報提供、アポイントメントの取り付け、現地の状況の説明、海外事務所職員の同行、現地での活動拠点として海外事務所のスペースや備品の貸し出しなどがあります。 世界に目を開くと、このような情勢であることがわかります。今こそ仙台市が積極果敢に取り組むべき領域であると考えます。そして仙台が世界に名を上げ大きく羽ばたく道につながると考えております。私はこれから国際社会の中で生きるのだという旗を揚げたいと強く決意しております。 自治体自身の事業展開について国の事業との連携も視野に入れて積極的に取り組むお考えがあるか、市の姿勢をお伺いします。 |