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平成26年度第3回定例会一般質問 認知症対策
今回は年々増加して社会問題になっている認知症対策について、診断の遅れ、介護の大変さを経験した事実を踏まえて質問を展開します。
団塊世代の高齢化に伴い市民の急速な高齢社会の進展は、ガンや生活習慣病と共に認知症というリスクを伴いながら生活するという現代の姿を現出しております。85歳以上の後期高齢者の4人に一人は認知症の症状があるといわれ、更に今後20年で倍増すると予想される現今の社会では、対応策の取得は決して避けて通れない現実であります。更に深刻なのは若年性認知症患者が年々増加していることです。これは家族生活に深刻なダメージを与えるからです。
1 初期症状について
普通の物忘れは誰にもあることですが、認知症では忘れ方が違うといいます。例えば字が書けなくなったり、新しいことを覚えられなくなったりした時、高齢のせいだと思って認知症の初期症状だとは判断しないと思います。この段階で診察を受けさせる家族はいるでしょうか。記憶障害だと指摘されればそうかと思いますが、予備知識がなければ見逃すのは当然ではないかと思います。自分の親が認知症の道を辿るとは予期しないものです。
実行機能障害といって、日常生活に必要な作業がこなせなくなる状態ですが、こまめに掃除していたのが、雑になり果ては掃除しなくなっても、家族からすれば老人が腰を曲げて掃除しているより、若い人がさっさとすればその方がよいと判断するでしょう。また自分のしたいことばかりするのを見て、自由にさせておいた方がどちらもよいと思って下手な口出しをしないものです。それが認知症の初期症状とは想像もできません。
このようにして次第に重症化して家族の手に負えない状態になって初めておかしいと思い、精神科を受診させた時にはだいぶ進んでいたというのが多いと思います。高齢になればできなくても当たり前という常識は通じなくなった現今です。本人の言動がおかしかったり、家族が介護に苦労していることは他から見てすでにばれてるのに、世間体をはばかって外部に隠すのは、以前ガンに罹ったことを本人に隠したり、世間に隠したりした轍を踏んでいる家族もあります。同じ境遇の方と話し合えればと思います。
そこで、このようなことを高齢者を持つ家族に知って貰うことが大切だと考えますが、市では現在どのような対策を進めているかお伺いすると共に今後の対策の進め方についてもお伺いします。
2 地域包括支援センターの役割の周知について
高齢者が自身でまた家族が認知症を自覚し、進んで地域包括支援センターに相談に行くケースは少ないと思います。認知症高齢者の本人や家族の生活をサポートしてくれる機関であることを知らない場合が相当あると認識しております。本来本人が住み慣れた地域でその人らしく安心して暮らせるのが一番望ましいと思います。それには、介護・福祉・保険・医療など身近な人から各種機関までの支援を受ける必要があります。しかし、本人自身や家族が認知症だと思いつくのは諸症状のごく一部で、それなら十分生活できると判断している場合が多いと思います。必要を感じないと手を出さないのは普通だと思います。
そこでせっかく力を入れて開設してる地域包括支援センターの機能や仕組み、活動の範囲と活動状況、地域との連携の理想と実態、今後取り組む課題等について当局のご説明をお願いします。
3 若年性認知症の発症と生活について
65歳未満の年齢で認知症に罹った場合、若年性認知症と言いますが、その原因となる疾患は血管性認知症が40%、アルツハイマー病が25%、頭部外傷後遺症が8%、その他となっており、全国で37800人(H21年3月発表)です。認知症高齢者が300万人以上と言われているので、それに比べれば少ないけれども、発症者は男子に多いのです。本人が現役世代なので認知症になって職を失うと経済的に困ります。親の病気が子供に与える心理的影響も大きく、教育、就職、結婚などの子供の人生設計が変わることもあります。
若年性認知症の場合、多くの人が現役で仕事や家事をしているので、認知機能が低下すれば、支障が出て気づかれやすいと考えられます。実際には仕事でミスが重なったり家事がおっくうになったりしても、それが認知症のせいだとは思いません。多くは他の病気だと思って医療機関を受診します。そして誤った診断のまま時間が経過し、相当悪くなってからようやく診断された例も少なくありません。
市としては、職場の管理者・経営者など上司が従業員の働きぶりにばかり注目して、若年性認知症の兆候を見逃すことのないように、頻繁に啓発の機会を設けるよう積極的に担当機関を機能させなければならないと考えますが、当局のお考えをお伺いします。
4 認知症に罹らない体質づくりについて
人は健康で高齢者となり安心して生活できることが一番ではないでしょうか。単なる長命ではなく健康寿命です。それに反して認知症対策はすべて発症してからとりうる方法を考え、対処しようという道筋ですが、そもそも高齢者でも認知症に罹っている人よりも罹っていない人の方が多いわけだから、何を自覚しどんな努力をすれば認知症にならないか、従来の生き方を見直して改善する道があるのではないかと考えます。まだ寡聞にしてこのような話を聞いたことはありません。医学の研究が遅れているためなのか、すでに社会問題になりつつあるこの認知症対策に予防医学的な取り組みはできないのか、認知症に罹らない体質づくりは本当に不可能なのか、何としても知りたいと思います。世界で最も認知症高齢者の少ないと思われる地域をいろいろな角度から調べてみるなどの報告はまだ出ていないように思います。
この点について当局のご見解をお伺いします。
5 形は立派にできても実行が伴わない根源について
市では平成20年から認知症対策推進会議を設置して、目標を定め取り組むべき課題を年次を追って位置づけ、活動を展開しておりますが、その根幹をなす市立病院の精神科の医師の数を照合してみると、目標設定の時期には常勤の医師が4名は確実に常勤で勤務していたので、この態勢が継続するものとして立案されたと考えられます。支援体制ワーキンググループの時期になると、常勤の医師は2名となり、本来の医師の業務を行うのに精一杯で、保険・医療・福祉の連携整備や関係機関のネットワーク構築には手が回らなくなり、題目を並べただけになってしまった。4人でしてきた業務を2人でするとなれば無理が生ずることは誰の目にも明らかです。そして後任者を探すにしてもこのことを知った上で好んで多忙な市立病院で働こうと思わないのは当然でしょう。
平成24年9月から地域支援体制構築ワーキンググループで早期相談・対応・支援体制の構築を進める予定だったが、平成26年当初から常勤医師はいなくなり、3人で週2日大学から派遣を受けて業務に当たっていただいている状態で、平成25年5月から病院休棟、同時に認知症の鑑別診断等、認知症疾患医療センターの業務を休止しています。
前回の質問で後任者を早く探す約束にしておりましたが、この状態では解決するのは困難です。4人分の業務を少数の後任者ができるわけがないのは明らかです。精神科の医師の絶対数が少ない中で、市で最も重要な精神科の医師を採用するためには、業務の半減や待遇の向上など、喜んで勤務できる病院の体制づくりが求められています。これらのことを総括して当局はどのようなお考えかお伺いします。
6 家族の手に負えない認知症患者への対応について
高齢者認知症患者の介護に当たる家族は、夫婦なら老老介護となり、つきっきりの介護に疲れてしまう場合が多く見られます。どちらも生きなければならないので、介護施設に入所させる事も必要になります。マイペースながら仲間と触れ合ってお互いに助け合ったりして生活する認知症高齢者グループホームや特別養護老人ホーム、軽費で済む通所型の各介護施設では、家族に代わって要介護の程度に合わせて介護し、生活の一部を楽しませてくれる。家族にとっては自分の心の休まる時間を得、仕事や用達など自分でしなければならないことを済ませる機会を作る。
費用は公立・病院施設・一般の会社など立地の違いで差があり、宿泊施設では、高額になる。消費税の値上げはここにも影響し月額2万円多く支払うようになりました。しかし需要は盛んで順番待ちのところが多いと聞いています。結局支払い能力のある家庭が利用できる介護施設ということで、そこに悩みがあり、覚悟がいります。
この場合、入所に際して取り交わす契約書の内容が本当に実施されているのか、入所者や職員に対する経営者の姿勢が問われて問題化しているところもあります。つまり経営者の利益追求の対象にされているところもあり、市の指導・監査で目を光らせてほしいものです。
脳を冒されているため認知症高齢者は一般の高齢者と問題なく交流できるとは言えない。孤立したりふさぎ込んだり、仲間はずれになったりで、結局認知症高齢者専用の介護施設をもっと低料金で利用しやすく多数開所するようになればよいと思います。
市の認可した認知症高齢者対象の介護施設の現在数と、認可を求める開所希望施設の現在数、またその利用状況と問題点について当局のご見解と展望をお伺いします。
7 要支援から軽度要介護の在宅認知症高齢者の介護について
今在宅認知症高齢者の介護・生活支援問題が家族生活を揺るがし、社会全体がその支援に努力しなければならない時期に到達しており、今後更に社会問題に発展しかねない状況にあることは、周知の通りです。 国も自冶体もその対策に懸命に取り組んでおりますが、膨大なマンパワーが必要であり、よき理解者の尽力だけではどうにもならない事態になっております。
市では在宅認知症高齢者は住み慣れた地域で安心して生活できるよう、認知症対策の関係機関ネットワークづくりや、小規模多機能居宅介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護等のサービス基盤の整備をはかるとともに、必要によって入所施設の整備を行ってきました。市としても今後高齢者人口の増加に伴い、認知症の方もますます増えていく中、引き続きニーズを的確に捉え、それに見合った基盤整備を行っていく必要があると強調しております。 また、これまで取り組んできた、認知症の早期診断、早期対応を推進するための認知症サポート医の養成や、認知症初期集中支援のモデル事業に加えて、例えば骨折などの医療で、転ぶ原因を単なる老化としてしまわないで、認知症に起因するのではないかと診察するよう各科のすべての医療従事者を対象とした認知症対応力向上研修などを通じて、認知症の方が必要な医療のケアを受けることができる体制づくりを推進する必要があるとして、努力中と言っております。しかし肝心の市立病院の精神科医師の不在を解消しなければ、司令塔を欠いての事業となり、どのようにして難問を解決したらよいか決断が難しいと思います。 そこで問題点を整理して質問しますので分かりやすくお答え下さい。
① 認知症の人が地域で暮らすことの意味 認知症の人が地域で暮らすことは、自宅・介護保険施設などの居住形態に関 わらず、それまで住み慣れた地域にとどまることを意味します。認知症が人生後半期に出現することは、その人が年齢を重ねる中で積み重ねられた体験や経験、その上にある生活や社会的活動の延長線上にあると言えます。だから友人との交流や趣味活動、周辺の散歩や買い物などの外出は、慣れ親しんだ地域に住み続けることによって確保されます。記憶障害や見当式障害は様々な混乱を引き起こしますが、それでも地域での生活の継続が行動・心理の安定に寄与します。
実例:独居認知症高齢者、家族・伴侶・親類もない一人住まいの方、家に閉じこもりゴミの中に埋もれ、入浴・着替えも出来ず、ごく近くの店でなにがしかの食べ物をわずかに買って食べている。それでも本人は病気だとは思っていない。
近所の方々が、見るに見かねて、地域のケアマネージャーに相談し、食べ物を届けたりしながら、市の福祉課の人とやっと外来に連れて行き診察を受けさせた。
この方について地域生活と市の機能を当局の目から見てどのように考察しますか。
② 地域で安心して暮らす上での課題 認知症高齢者が地域で暮らすためには、様々なサービスの利用が必要です。 介護保険では訪問介護やデイサービス、小規模多機能型サービスなど地域生活を継続していく上で利用できるサービスがあり、提供されるサービスの中にそれまでの活動が反映されていくことが必要です。刺激すれば「できる」ことの手がかりが潜んでいると見て、それに気づき積極的に取り入れたいものです。また、認知症の症状が原因で本人による意思決定が困難になった場合には「成年後見制度」の利用など、第三者による意思決定の支援が必要となります。
・地域における認知症の理解
認知症の人が直面する問題を出来るだけ多くの人が理解していくこと。更にその家族の抱えている問題が理解されるなどの普及啓発が果たす役割は大きい。
・住み慣れた地域であることが活かされている 認知症になると日常生活や社会的活動が制限される傾向があり、自宅や地域のグループホームで生活していても、生活や活動が「隔離」された状態に陥る可能性があります。どうしたら認知症の方が生活の中で地域に関わっていけるか工夫が必要です。
市としてはどの組織を中核として活用し、どのようにして地域の中に介護・見守りなどを浸透させる計画なのか、また今後急速に増加すると見込まれる軽度の認知疾患者を早期診断・早期対応するために、どこで診断を受ければよいか、例えば精神科開業医でよいのか、もっと適切な医療機関があるのではないか、この問題からすり抜けるようでは本気で取り組んでいるとは思えないので、しっかりした答弁をお願いします。
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