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定例会一般質問![]() 自由民主党の加藤和彦です。
インバウンド推進や観光振興の観点からの国道48号の渋滞対策と整備促進、並びに、全国的な問題となっている有害鳥獣、特にクマ対策に焦点を当てながら、順次質疑してまいります。
1.国道48号の整備促進
世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症による訪日外国人旅行者の大幅な減少は、観光業界に影響を与える一因となりました。今年の5月には、およそ3年3か月にわたって世界保健機関から出されていた「緊急事態宣言」が終了し、我が国においては、新型コロナウイルス感染症の位置付けが2類相当から5類感染症へ見直されるなど、社会・経済活動が正常化するアフターコロナの時代へと動きが進んでいます。
そうした中、令和5年度の観光白書によると、訪日外国人旅行者数は、昨年6月の外国人観光客の受入再開後、10 月の入国者数の上限撤廃、個人旅行の解禁、ビザなし渡航の解禁等の水際措置大幅緩和等により大きく増加し、今年の4月には、令和4年10月以降単月では最多となり、2019 年同月比で、約66%まで回復し、さらに、今年10月にはコロナ前である令和元年同月を超えたという政府機関の発表もあったところであります。
また、近年の円安の進展もあいまって、インバウンドの需要日本での消費が、今後も高まっていくものと考えます。
先日、西日本の都市に視察に行く機会がありましたが、東北とは比べ物にならないほど多くの外国人観光客が訪れているのを目の当たりにしました。東京から大阪までのいわゆるゴールデンルートや、アジアとの距離の近さを強みとした福岡をはじめとした西日本エリアと比べ、東北はまだまだと感じたところです。インバウンドをはじめ観光振興の充実には、改めて言うまでもありませんが、仙台市単体だけではなく、東北全体、特に隣接県である山形や岩手と連携した取り組みが不可欠であり、中でも都市間を結ぶ交通は極めて重要であると考えます。
私は、令和4年第1回定例会の質疑において、関山街道を軸とした仙山連携について取り上げました。仙台と山形、この二つのまちを結ぶ交通は、古くから関山街道、笹谷街道、二口街道の三つがあります。笹谷街道は国道286号と山形自動車道となり、現在では本市と山形市を結ぶ主要路線となっており、また、二口街道は、自然豊かな景観や、歴史を堪能できる貴重な路線です。
そして、関山街道は古くは宿場が置かれるなど、街道沿いの町として歴史を持つ路線であります。この関山街道、国道48号を大きな軸に、愛子地区から新川、作並地区を経て山形側の東根市や天童市に至るそれぞれの地域が持つ魅力を引き上げ、そしてつなげていくことにより、より一層エリアとしての魅力向上を図ることができる、新たな仙山連携の可能性を指摘したところであります。
(1)観光的側面から見た交通渋滞についての認識
現在、国道48号は、愛子から都心までの区間が、仙台西道路や愛子バイパスとして片側2車線の整備がなされている一方で、愛子から西側は片側1車線となっており、近年の開発などによる沿線人口の増加により、交通需要が増加したことから、朝夕の時間帯で渋滞が発生し、行楽シーズンにおいても時間帯により愛子から熊ヶ根まで渋滞が発生しております。フルーツ王国・山形のサクランボやブドウ、ラフランスなど季節ごとの果物狩りや、夏休みのレジャー、さらに紅葉や新そばなど、四季折々のイベントがあるたびに、国道48号は仙台ナンバーを中心とした車で溢れ、渋滞の頻度は年を追うごとに高くなっていると感じます。
このことは、経済活動のみならず、インバウンドをはじめとした観光振興にとっても大きなマイナス要素になっているのではないかと考えるところです。こうした観光的側面で見たとき、観光部局においてはこの交通渋滞をどのように捉えているのかお聞かせください。
⑵国道48号の交通環境改善についての認識と優先順位
以前から申し上げているように、東根市や天童市を含めた仙山連携による経済活動や観光振興の活発化は本市の持続的発展にも大きく寄与するものと考えるところであり、そのためには国道48号の交通環境の改善が必須と考えますが、当局の認識はいかがでしょうか、伺います。併せて、本市の道路事業全体の中で、国道48号の整備はどのくらいの優先順位にあるのでしょうか、伺います。
⑶国との協議状況と現在の対策
国道48号の道路管理者は国になりますので、本市だけで解決できる問題ではありません。この間、国においても、交通環境の改善に向けて様々な対策を実施しているとは思いますが、これまで国とはどのような協議を行ってきたのでしょうか、現在の渋滞対策状況と併せて伺います。
⑷バイパス整備を含めた今後の抜本的対策
さらにいえば、愛子・熊ヶ根間の既存の道路を拡幅しようとしても、沿線には人家なども立ち並び、時間的にもコスト的にも現実的ではありません。例えば、愛子バイパスからそのまま現道より大きく南側を通り、上愛子に至るバイパスを新規整備するなど抜本的に渋滞対策を進める必要があるのではないかと考えるものですが、今後の対策をどうしていくのか、本市としても国に強く申し入れるべきと考えますが、ご所見を伺います。
2.有害鳥獣対策(クマ対策)
次に、今年特にニュースで取り上げられることの多い有害鳥獣対策、特にクマによる被害への対策についてであります。
クマの出没自体はそれほど珍しいものではありません。しかし、異常なのは、全国的な人的被害の多さであります。北海道、東北、北陸を中心としつつ、西日本にも広がり、報道によれば、今年4月から11月までに人的被害に遭われた方は200人を超え、過去最多を記録し続けているとのことであります。そして近年の特徴として、人里の田畑や人家周辺、さらに住宅地にまで出没範囲が拡大しています。
その原因として、熊の餌となるブナなどの実がここ数年、凶作となったことや、バッファーゾーンとなっていた里山の荒廃が進んだことなどが指摘されています。それはそうなのだろうと思いますが、恐ろしいのはクマの行動形態が変わり、都市部に当たり前のように出没し、被害が常態化することであります。人家周辺に出たクマが人の生活の中にある食料の味をいったん覚えてしまうと、それを求めて頻繁に出没してしまうという、悪循環が生まれるのではないか。それは、人にとっても、クマにとっても決して好ましい状況とはいえません。この人家周辺そして街中にも出没するクマにどう対応していくのか、本気で取り組んでいかなければなりません。
⑴今年のクマの出没傾向と対応、及び昨年からの改善点
不幸中の幸いと言えましょうか、本市では本年度人身被害はありません。しかし、クマの出没件数自体は昨年度を大幅に超えており、特に11月においては例年の倍以上になっていると伺いました。私のもとにも、農家の軒先の干し柿を狙って熊が現れ、窓を開けようとしたら、窓越しのすぐ目の前に熊がいて大変驚いた、との体験談も寄せられています。体長1メートルを超えるクマが、目をぎらつかせながら、軒先目指して両手を上げているわけですから、窓越し
とはいえ、恐怖はいかばかりだったかと思います。全国的な被害のニュースとも相まって、住民の皆さんは非常に不安な気持ちを抱えています。
まずは、今年の市内でのクマの出没傾向をどう捉えているのか、また、これを踏まえた対応はどうなっているのかお伺いします。昨年9月に陸前落合駅近くの街路樹でクマを捕獲した事案がありました。その際、警察との連携が必ずしも十分ではなかったとの話でしたが、その後どの
ように改善されたのか、併せてお聞かせください。
⑵棲み分けを図る取り組みについての所感
クマ対策として、従前から言われているのは、人の住む領域とクマの住む領域の住み分け、いわゆる「ゾーニング」であります。一昔前は、人里とクマの生息域が良い意味で分断されていましたが、今はその境界が薄れているのではないでしょうか。人が住むエリアと熊の生息エリアが近接し、昨年もよくあったように、畑作業や散歩をしている人が熊に遭遇するといったケースが増えている。とはいえ、クマと人の棲み分けを図る取り組みは基礎的対策として大切ではないかと考えるものですが、所感を伺います。
⑶新しい技術を活用したクマ対策
クマの被害は国内だけにとどまりません。ロシア以外でヨーロッパ最大のヒグマの生息地となっているのはルーマニアですが、かの地でも、食べ物を求めて森から出てきたクマが人や家畜を襲う事例が増加しているそうであります。その背景として、観光客による餌付けや、施錠されていないゴミ箱に放置された食べ物などが誘因となっているようです。その中で、クマとの共存を目指す取り組みとして、クマには開けられないゴミ箱を試験的に導入したり、民家やゴミ箱の周りに電気柵を設置するとともに、クマとの対立を避けるコツをまとめたアプリなどもある、との報道を目にしました。
また、国内においても、京都市に本社のあるロボットメーカー、テムザックが害獣対策ロボットを開発したとの記事があり、基本的にはイノシシなどの害獣対策のようではありますが、熊対策にも応用できる可能性があるとのことでした。
紹介したのはほんの一部ですが、クマによる被害を拡大させないためにも、新しい技術を取り入れながら、被害を未然に防ぐ取り組みも検討の価値があると思いますが、所見を伺います。
⑷捕獲のための人材確保
こうしたクマとの棲み分け、クマを追い払う対策も重要であることはもちろんですが、住民の生命が脅かされる恐れがある場合には、適切に捕獲しなくてはなりません。その担い手として、猟友会からの推薦により仙台市鳥獣被害対策実施隊として活動する方々には大変なご尽力をいただいているわけですが、高齢化や後継者不足の課題があり、人材確保や育成期間の短縮は、喫緊の課題となっています。警察OBや自衛隊OB等、県などとも連携して人材活用を図ることが必要と考えますが、考えを伺います。
⑸度を超えたクレームへの対応
次に、他県などで問題になっている、自治体や猟友会などクマの捕獲業務を担う当事者への、度を越えたクレームについてであります。
これまで述べてきたように、今年は全国各地でクマによる人身被害や捕獲の件数が増加していますが、それに伴い多数のクレームが主に地域外から寄せられ、業務に支障が出ているという報道を多く目にするところです。本市においても、件数はそれほど多くないとはいえ、県外などから長時間にわたるクレーム電話があったなどの事例を聞いております。
「クマに罪はない。捕獲するのはかわいそうだ。」といった心情は一定理解できますし、行政当局として、市民などから寄せられる様々な意見に丁寧に対応することが原則であると理解しておりますが、一般的な意見、抗議や苦情の範囲を逸脱した理不尽なクレームに対しては毅然とした対応が必要であると考えます。
現場で対応する職員や鳥獣被害対策実施隊などの皆様は、住民の生命・財産を守るために危険を冒して捕獲等の業務に従事されているのであり、これらの方々が理不尽なクレームによりストレスにさらされ、業務が停滞するといったことは絶対に防がねばなりません。
クマの捕獲等への抗議が殺到している秋田県では、佐竹敬久(さたけのりひさ)知事が悪質なクレームへの対応として録音機能付き電話を活用する考えを明らかにするなど、トップ自らが先頭に立って担当部局職員が委縮しないよう毅然とした姿勢を見せています。
クマ対策に従事する多くの職員や鳥獣被害対策実施隊の皆様が、今後とも委縮することなく安心して業務に当たっていただけるよう、行政トップとしての郡市長のお考えを伺います。
⑹クマ対策についての全体的所見と市長の決意
クマ対策について、様々な視点から述べてきましたが、クマ対策は転換期にあると考えます。従来、仙台近辺に生息しているのはツキノワグマであり、ヒグマは凶暴だが、ツキノワグマは相対的に臆病であり、人の気配を感じると逃げたり、藪の中に隠れたりすると言われてきました。しかし、特に今年の状況を見る限り、今後の対策を考えるにあたっては、そうした認識を改めなければならないのではないでしょうか。被害から身を守るにはどうしたらよいのか、登下校時に農道などを歩くこともある小中学生はじめ子供たちへの鳥獣対策教育、さらには住民への注意喚起などを積極的に発信することも重要と考えます。
住民の安全な暮らしを守るためにあらゆる手を尽くすべきと考えますが、最後に市長の決意を伺って、私からの質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
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