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定例会一般質問![]() 自由民主党の加藤和彦です。
議長のお許しをいただきましたので、以下、中山間地域における人口減少対策を中心に、地区まつり支援などについて、順次質疑を行ってまいります。
1 西部中山間地域の総合的な人口減対策について
本年4月、民間の有識者グループ「人口戦略会議」が「消滅可能性自治体」についての分析レポートを公表しました。2014年に「日本創生会議」が、いわゆる増田レポートを公表し、「消滅可能性都市」という言葉が世間を騒がせてから、10年になります。
この議論は、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計を基に、20代から30代の女性の数「若年女性人口」の増減率を自治体ごとに分析したものですが、今回公表されたレポートでは、2050年までの30年間で、若年女性人口が半数以下になる自治体は全体の約4割に当たる744自治体であり、これらの自治体は人口が急減し、最終的に「消滅可能性がある」とされました。
その中でも東北エリアに着目してみると、215自治体のうち「消滅可能性自治体」は165と実に77%に上り、全国の各エリアの中で最も多くなっております。まさに課題先進地域であります。
もっとも、私は、「消滅」という表現によっていたずらに将来に対する不安を高めることは必ずしもいいこととは思いません。しかしながら、目の前にある課題に対し、見て見ないふりをするのでなく、客観的なデータ分析を受け止め、それに的確に対策を打っていくことが必要なのはある意味当然であります。
今回の一般質問では、人口減少が進む西部エリアの中山間地域、宮城地区の特に西部に着目して、今後の対策について、教育、雇用、住宅施策の3つに関して、議論していきたいと思います。
【1-①特色ある教育を生かした移住促進】
まずは、教育です。
10年前の増田レポート、そして今年の人口戦略会議のレポート、あまり望まない形で注目を浴びたのが群馬県の南牧村(なんもくむら)です。下仁田(しもにた)ネギで知られる群馬県下仁田町からコミュニティバスに乗り継いでたどり着く、緑豊かな集落ですが、消滅可能性都市の指標である若年女性人口の減少率が全国最高の88%、2020年の調査時点で約50名いる若年女性が2050年には6人まで減ってしまうという衝撃的な数字です。まさに課題の先進地ですが、逆説的に言えば、そこに学ぶべき点もある、というふうにも言えるかと思います。
南牧村では、この春新しく義務教育学校が開校しました。これまでの小中それぞれ1校を廃校とし、小中一貫教育を行うための、地元の木材をふんだんに使った学び舎が整備されました。義務教育学校では、9年間の幅広い異年齢交流や、小中学校教員の協働による指導、地域と連携したふるさと学習など特色ある教育活動や行事を取り入れ、地域と学校が一体となった「ふるさと南牧」の教育を目指す、というものです。
児童生徒が合わせて20人程度という超のつく小規模校ではありますが、そうした小規模校、あるいは中山間地域ならではの特色を生かした、他の地域とは一味違う教育活動や学校運営を打ち出していく必要があるのではないでしょうか。子供の教育は親にとって大きな関心事であります。そうした特色ある教育が行われている学校があれば、数はそれほど多くなくとも、中山間地域に新たな人、子育て世帯を呼び込むきっかけにはならないでしょうか。そうして年に1組でも2組でも転入者が増えてくれば、複数年経ってみれば大きな流れになってくることも期待できます。
もう一つ事例を紹介します。九州北部の玄海灘沖、福岡県と対馬の中間地点に位置する島、長崎県の壱岐(いき)市です。長崎県内には多くの離島がありますが、自然豊かな島の環境の中で学習できる制度として、長崎県では平成15年から高校生の離島留学制度が導入されています。その後、壱岐市においても、小中学生の離島留学制度として、平成30年から「壱岐市いきっこ留学制度」が開始されています。
自然豊かな島でのびのび育つ。島の子供たちとの交流や島の文化・風土に触れながら、これまでとは異なる環境の中で、新たな自分の発見や強さを身につけることを謳い文句に、3タイプの留学方法が設けられています。一つ目は、子供が単身で壱岐の家庭にホームステイする「しま親留学」、二つ目に、子供が島内在住の祖父母や親戚の家にホームステイする「孫戻し留学」、3つ目が、子供と親がともに移住する「親子留学」です。
さらに、対象となる家庭にはホームステイ費の補助制度が用意されていたり、新規転入者の移住支援として引越し費用の3分の2を補助する制度なども整えられ、金銭面でも負担を少なくしながら留学することができるよう配慮されています。
このような留学をきっかけにして、若い世代を中心とした転入者の直接的な増につながったり、そこまでいかなくとも地域と縁ができ、関係人口の拡大などにつながっていくということが期待できるのではないでしょうか。
さて、本市宮城地区に目を転じると、青葉区の最も西に位置する広陵中学校の全校生徒は約30名。震災前の平成22年度は85名でしたので55人の減少となっています。同じ期間の中学校区の人口推移を見てみますと、1,944人から1,307人へと637人、約33%の減少となっています。一方で、65歳以上の人口は、いったん増えてその後減少に転じ、くしくも全く同じ595人です。人口に占める65歳以上の割合は、年少人口と対照的に、30.6%から45.5%へと約1.5倍となっています。このことは、子育て世代や若い人が流出し、高齢者が地域に残って、年齢構成が大きく変わっていることを意味します。こうした傾向を今すぐ反転させることは難しくとも、一つ一つ手を打っていかなければ問題は加速するばかりです。
教育を切り口としながらの人口減少対策についてここまで述べてまいりましたが、まずは、こうした中山間地域における特色ある教育や本市での展開の可能性についてどのようにお考えでしょうか。私は積極的に進めていくべきと考えますが、ご所見を伺います。
【1-②雇用(学校跡施設の利活用)】
関連して、学校跡施設の利活用についてです。
この間、西部地区の多くの学校が統廃合されてきました。大倉中と熊ヶ根中、大倉小そして作並小と、分校も入れればさらに多くなります。それぞれの事情の中で、子供たちのよりよい教育環境のために、地域と話をしながら進められてきたと理解しておりますので、そのこと自体に異論はありません。しかし、統廃合された後の学校跡施設の利活用についてはもう一工夫あってもいいのでは、と思うところです。
以前から繰り返し申し上げておりますが、東北の基幹産業は「農」であり、「食」であると私は考えています。学校跡施設についても、周辺の農地と合わせて畑等として活用することや、校舎をリノベーションした食品加工工場や直売所など活用可能性はあるのではないでしょうか。あるいは農業からは少し離れますが、合宿施設なども面白いかもしれません。
人口減少対策を進めるにあたっても、豊かな自然と教育環境だけでは、魅力はあっても移住までは踏み切れません。そこで暮らしていくためには、生活の糧、つまり安定した雇用があることが必須要件です。
学校の統廃合は全国的に進められ、数多くの先進事例があります。そうしたものに学び、仙台のこの場所ならではのオリジナリティを生かしながら、住民にとっては雇用を生み、外からは人を呼び込むような学校跡施設利活用であってほしいと考えるものですが、ご見解を伺います。
【1-③住宅施策】
次に、住宅施策についてです。特色ある教育を行っている学校に通うため、あるいは農業に従事するために、中山間地域に移住したいという希望を持つ世帯への支援であります。残念ながら、人が住まなくなっている住宅は徐々に増えている傾向にあります。そうした住宅の適正な管理のためにも、また、移住を希望する方の負担を減らす意味でも、古民家などを改修・リフォームして住むための費用の一部を援助できないものでしょうか。
今はインターネットなどで、移住に関する情報が簡単に調べられます。若い世代であればなおさらです。移住支援を積極的に行っている自治体では、移住支援金の用意などはもちろん、お試し移住のための住宅を低廉な価格で用意したり、新築又は中古住宅の購入に対する助成であったり、様々な施策が展開されています。
仙台市内全域でなどとは言いません。中山間地域のように、地域コミュニティを維持していくために、「必要なエリアを限定して」そうした移住者向けの住宅支援を行うことは、意味のあることと考えます。ご所見を伺います。
【1-④下水道インフラの整備と浄化槽修繕について】
関連して、基幹インフラである下水道について伺います。個人の住まいにしても、工場など企業誘致にしても、基礎的なインフラの整備というのは不可欠です。宮城地区の公共下水道は、平成元年には総延長が55kmであったところ、着実に整備が進み、35年たった今では6倍近い309kmまで延びていますが、市内中心部から白沢地区までは延びているものの、そこまでで止まっているようです。今後宮城西部地区にさらに公共下水道のエリアを拡張する計画はあるのか、伺います。
とはいえ、市内全域くまなく、というのが現実的ではないのも理解はするところです。未整備エリアについては浄化槽にて対応することになると思いますが、本市では、個人つまり一般住居についての公設、引き取りの支援はありますが、レストランやカフェなどの飲食店対する支援はないのではないかと思います。また、個人についても、宅内の排水設備の新設時には支援がありますが、修繕等については支援がないと思います。
実態として、こうしたエリアには高齢者世帯が多く住んでおり、年金収入を頼りにしている世帯に個人で修繕を、と言っても負担感は大きいのではないでしょうか。浄化槽の設置・修繕に関する必要な支援の在り方について検討すべきと考えますが、ご所見を伺います。
【1-⑤人口減対策まとめ】
中山間地域における人口減少対策について、教育、雇用、住宅の3つの柱を中心に述べてきましたが、何か一つをやれば人口減少に歯止めがかかるというものでは当然ありません。20年、30年先を見ながら、地道に取り組みを続けることで、子供がいる世帯が少しずつ増えていき、人口減少と言われる時代にあっても、地域の維持につながっていくのではないでしょうか。
東北唯一の政令市として、中心部の賑わい、スマートシティの推進は一つの目指す方向性であることは否定しません。ですが、同時に中心部を取り巻く外周部の活性化があってこそ、都市としての懐の深さが生まれてくるのではないでしょうか。自然環境を破壊することなく、共生しながら魅力を磨き上げ、同時に雇用で暮らしを成り立たせ、そういうところに住みたいというファンを増やしていく。こういった仕組みを作りながら、中山間地域のモデルとなるような取り組みに昇華させていくべき、と考えるものですが、本市として中山間地域の人口減少にどのように向き合っていくのか、お考えを伺います。
2 区民まつり・地区まつり支援について
最後に、地域における「まつり」は、地域づくりにあたって大きな役割を果たしていると思います。本市においては、区・総合支所のエリアごとに区民まつり、宮城・秋保の地区まつりが企画・実施されており、8月には先陣を切って泉区において開催されましたが、今後10月から11月にかけて各地区で順次開催されます。コロナ禍を経て、感染症法上の位置づけが変わった昨年度は、宮城地区まつりで約11,000人、5区と総合支所併せて26万1千人と、待っていたかのように多くの方が来場されており、皆さん楽しみにしておられます。
私も実行委員の一人としてお手伝いさせていただいておりますが、昨今の物価高騰はまつりの開催にも大きな影響を与えております。舞台の設営一つとっても従来とはコスト感が大きく違います。例として、宮城地区まつりの令和元年の事業費は約460万円でしたが、昨年度には600万円近くになっており、今年は更なる増加が見込まれ、まつりを運営するための財政は非常に厳しいと感じます。もちろん寄付金や協賛金を集めるなどの工夫していくことは当然です。しかし、まつり全てとは言いませんが、こうした区民まつり・地区まつりの運営に関しては、市としても運営経費をどうするか、負担金の増額も含め考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。ご所見を伺います。
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